2023 Fiscal Year Research-status Report
血中アンギオテンシンII による成熟海馬神経新生の促進機序の解明
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23K14221
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小山 友香 鳥取大学, 医学部, 助教 (30827572)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アンギオテンシンII / 海馬 / 脳弓下器官 / 終板脈管器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血中アンギオテンシンII(Ang II)による海馬神経新生の促進機序の解明を目的としている。血中Ang IIは血液脳関門を通過できないが、脳弓下器官(SFO)、終板脈管器官(OVLT)は血液脳関門を欠き、尚且つ1型受容体(AT1R)を発現しているため、これらの脳領域を介して海馬に影響を及ぼしている可能性がある。そこで、今年度は主にこれらの領域と海馬をつなぐ神経連絡の解明を進めた。これまでに、海馬にAT1Rが発現していることを生化学的に見出している。また、SFO/OVLTからは直接海馬に神経連絡があり、その神経伝達物質がAng IIである可能性が示唆されている。そこで、SFO/OVLTのAng II作動性ニューロンが直接海馬に投射している可能性を検討した。まずはラット脳室内投与の手法を新たに確立し、脳室内に蛍光標識したAng IIを投与したのち凍結脳切片を作製し、これを検出した。その結果、SFOからの主要な投射先のひとつである正中視索前核がAng IIの作用を受けることを確認できたが、一方で海馬では蛍光標識したAng IIは検出されなかった。また、脳の急性スライスを作製して蛍光標識したAng IIを作用させたが、その作用部位の検出には至らなかった。スライス後の組織において細胞の生存を維持できていないためと考えられる。この手法は今後の電気生理学実験においても欠かせないため、早急に改善する必要がある。 Ang IIが作用しうる脳領域に発現している受容体のサブタイプを免疫組織学的に調べているが、従来の4% PFAによる固定法では難しいため、代替法としてグリオキサールで固定を行い、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳室内に蛍光標識をしたAng IIを投与し、凍結切片を作製して検出できるようになったが、この手法を確立するまでに予定していたよりも時間がかかってしまった。そのため、この手法を応用して行う予定だったトレーサーの局所投与による神経連絡の解析が遅れている。また、脳の急性スライスを維持する手法を確立できていないため、電気生理学実験に進むことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
脳室投与の手法を確立したため、次は局所投与の手技を確立し、トレーサーを用いてSFO/OVLTから海馬への神経連絡の解析を行う。また、脳の急性スライスの維持に必要な条件を検討し、早急に手法を確立する。Ang IIの作用部位を検出するとともに電気生理学実験にも取り組み、Ang IIが海馬の神経活動と神経新生に及ぼす影響について検討する。本研究では、SFO/OVLTが中脳腹側被蓋野(VTA)のドーパミン作動性ニューロンを介して海馬に影響を及ぼしている可能性も想定している。VTAにおいて血中Ang IIの上昇によるニューロンの活性化を免疫組織学的に検出するとともに、この領域を介した海馬への神経連絡を解明する。
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Causes of Carryover |
小動物用脳定位固定装置を設備備品費で購入するため初年度の経費を多めに計上していたが、一部のパーツを譲渡していただいたため一式すべてを購入する必要がなくなったことが主な理由である。次年度は、免疫組織学的解析やタンパクの定量を予定しているため、このために必要な抗体やELISAキット等の購入に充てる予定である。
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