2023 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の内分泌器官側心体を由来とする新規ホルモンの飢餓応答への関与
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23K14227
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
吉成 祐人 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (30961388)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 代謝 / ホルモン / 栄養 / 飢餓応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は飢餓に対して、貯蓄したエネルギーを消費するかたちで生存を図る。ヒトを含む多くの動物において、飢餓後初期から後期にかけて、使用する貯蔵栄養や、それらの消費バランスの切り替えが起こることが知られている一方、その代謝の切り替えを行うシステムの正体は未だ明らかになっていない。 申請者は、モデル生物であるキイロショウジョウバエを用いて、ショウジョウバエの内分泌組織である側心体に着目し、側心体がどのようにして個体の飢餓への適応を可能にするか、その生理的意義を明らかにするために、側心体の細胞を用いてRNA-seqを行った。その結果、側心体から分泌される新たなホルモン様分子を発見した。その側心体ホルモンを遺伝学的に欠損したキイロショウジョウバエは、飢餓に対する耐性が低下し、貯蔵脂肪やグリコーゲンを早く消費してしまうことが判明した。さらに、側心体ホルモンは飢餓後初期ではなく、一定時間が経過した後に側心体から体液中へと分泌されていることが明らかになった。また、摂食行動については側心体ホルモンの機能阻害により糖への嗜好性が高まることを見出し、側心体ホルモンが脂質や糖質といったエネルギー産生系の栄養素と深く関わることを示唆するデータが得られている。 今後、側心体ホルモンの分泌が飢餓に応じてどのようにして調節されているのか、また、グルカゴン様ホルモンやインスリン様ホルモンといった、飢餓時の代謝調節を担う既知のホルモンとどのようにして代謝のバランスを調節しているのかを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内の初年度には、代謝物測定や行動アッセイなどの基礎データの蓄積を目標としていた。その結果、基礎データの大部分の採取は完了し、側心体ホルモンがどういった代謝経路に影響を与えているのかを明らかにすることができた。 当初の計画の通りに本研究課題を推進することができており、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、側心体ホルモンの側心体からの分泌がどのようにして制御されているのかを調べる予定である。さらに、研究計画外ではあるが、既知の代謝調節ホルモンと側心体ホルモンの作用の差異や相互作用についても調べることで、複数のホルモンがどのようにして代謝バランスを調節するのかをより詳細に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたオミクス解析について、サンプルとする組織の精査に基礎データが必要であったため、初年度の受注を見送った。その結果、次年度使用額が生じた。予定していたオミクス解析については次年度以降に実施する予定である。
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