2023 Fiscal Year Research-status Report
屋久島高山域にて平行進化している矮小植物群の進化基盤の解明
Project/Area Number |
23K14246
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大樹 東北大学, 農学研究科, 特任助教 (50913216)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゲノミクス / 平行進化 / 屋久島 / 植物 / 被食防衛 / 矮小化 |
Outline of Annual Research Achievements |
系統的に異なる分類群における類似した形態形質の進化 (収れん進化) は、偶然によって生じる可能性が低いため、自然選択による形質進化を調べるための格好の材料である。本研究課題で対象とした屋久島では、主に高標高域に分布する100分類群以上の草本植物において、九州などの他地域の普通型集団と比べて植物体サイズが著しく小型化していることが知られている。これら矮小植物群の多くは屋久島に固有であり、植物体サイズには遺伝的な基盤があることも報告されている。本研究課題ではこうした収れん進化を示す矮小植物群の遺伝基盤の決定を目的としている。 今年度は既に全ゲノム配列が得られているキク科アキノキリンソウ属の矮小型分類群イッスンキンカと、新規に全ゲノム配列の決定を行ったシソ科トウバナ属の矮小型分類群コケトウバナを対象に全ゲノム集団解析を行った。両種の屋久島産矮小型集団と近隣地域の普通型集団12個体ずつをリシーケンスし、全ゲノム比較解析とセレクションスキャン解析によって矮小化に関係があると考えられる遺伝子座の探索を行った。 その結果両種において植物ホルモンや細胞伸長に関わる遺伝子座が矮小進化の候補遺伝子座として検出された。またそのうちのいくつかの遺伝子ではコード領域内に矮小型特異的な非同義置換や欠損などもみられたため、こうした変異が矮小進化に関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とした屋久島の矮小植物のうちイッスンキンカとコケトウバナに関してはゲノミクス解析を進めることができ、矮小化に関連があると考えられる候補遺伝子座を両種ともに得ることができた。一方で本年度行う予定であったイッスンキンカの交配株を用いたQTL解析は株の生育状態が良くなかったために行う事ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
既に全ゲノムの参照配列が得られているイッスンキンカとコケトウバナに関しては、交配株を用いてQTL解析を行う予定である。また植物ホルモン分析や発生観察もこれらの種に関しては行っていく予定である。また次年度は対象種のうち参照ゲノム配列を決定できていない種の全ゲノム配列の決定や普通型と矮小型を用いたリシーケンス解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
栽培株の成長が悪かったために、本年度予定していたイッスンキンカのQTL解析を行うことができなかった。その分析費用と試薬購入費に使用するための予算を消化できず、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は予定通りQTL解析の外注での分析とその試薬購入費に用いる予定である。
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Research Products
(1 results)