2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム倍化がもたらす分子進化の影響を数億年スケールで追跡する
Project/Area Number |
23K14249
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長澤 竜樹 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (60782828)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 真骨魚類 / 全ゲノム重複 / 古代魚 / OMP遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子重複により倍化した遺伝子は、一方が元の機能を担保することで、他方が変異の蓄積を許容し易くなり、機能や発現の変化が生じる例が多く知られている。これらの事から、遺伝子重複は進化の原動力として広く知られている。中でも全ゲノム重複は、ゲノム中に含まれる全ての遺伝子が倍化する為、最も強力な進化の原動力として認識されている。全ゲノム重複は顕花植物、酵母、脊椎動物など、主要な系統でそれぞれ生じている事からも、極めて重要な進化的イベントであると考えられている。本研究では約3億年前に全ゲノム重複を起こした真骨魚類のOMP遺伝子を対象に、種間比較などから重複後の遺伝子における分子進化の様相解明を目指す。より具体的には、成熟嗅神経細胞マーカーとして知られるOMP遺伝子は、真骨魚類の全ゲノム重複による倍化後に、発現細胞を相互に排他的に選択する事が知られている。これらの発現パターンの違いが、いつどのように生じ、維持されているのかを古代魚や複数の真骨魚種を用いた解析から明らかにしていく。これまでに複数魚種の全ゲノム配列からのOMP遺伝子の単離、ゲノムシンテニー比較からOMP遺伝子の進化的振る舞いについて記述し、それらの発現パターンについて代表種を用いた比較解析を行っている。さらに、これらの詳細な比較から導き出された、分子進化の挙動についての仮説の検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに複数魚種の全ゲノム配列からのOMP遺伝子の単離、ゲノムシンテニー比較からOMP遺伝子の進化的振る舞いについて記述し、それらの発現パターンについて代表種を用いた比較解析を行っている。さらに、これらの詳細な比較から導き出された、分子進化の挙動についての仮説の検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はモデル魚類であるゼブラフィッシュを用いた外来遺伝子の取り込みや、ゲノム編集解析などからOMP遺伝子の進化パターンについて詳細な解析を行っていく計画である。さらにこれらの解析が完了次第、学術論文の執筆に取り掛かると共に、これまでの解析から見つかった、OMP遺伝子の新たな発現局在とその進化について、理解を深めていく。
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Causes of Carryover |
初年度は公共データベースより取得した全ゲノム配列を用いた解析を中心に行った。初年度は複数魚種を用いた遺伝子発現解析に多くの予算投入を計画していたが、ほとんどの解析が予想以上にスムーズに進行した為、これらの使用予算を抑える事ができた。その一方で、当初は想定していなかったOMP遺伝子の異所的な発現が明らかになった。これらは成熟嗅神経細胞の機能に特化したと考えられてきたOMP遺伝子の他の機能を暗示している。そこで次年度ではこれらの異所性発現のOMP遺伝子とその機能を詳細に解明し、より多角的な面から全ゲノム重複による影響を評価する予定である。これらの予想以上の進展に対し、次年度に予算を投じる為に予算計画を次年度へと繰越する。
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