2023 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質運動前野から一次運動野における層依存的神経伝達機序解明
Project/Area Number |
23K14281
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
別府 薫 (下田薫) 東北大学, 医学系研究科, 特任研究員(日本学術振興会特別研究員RPD) (40747458)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 運動 / 行動 / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小脳から大脳皮質への神経入力が、大脳皮質の神経活動に与える影響と、動物の認知行動学習に与える影響を調べる。認知行動タスクを行う際中のサルから、大脳皮質一次運動野の1層から6層まで神経活動を記録し、小脳と大脳基底核からの入力してくる層の神経発火パターンと行動誘発との関連を解析する。大脳皮質の構造は、1層から6層までの細胞層構造を形成しており、小脳核からの入力は2/3層、大脳基底核からの入力はそれよりも浅い層(1層、2/3層の上層)に入力する。サルに視覚刺激を与えて適切なボタンを押すような認知タスクを行わせた際に、小脳から入力する層と、基底核から入力する層の神経発火パターンが、運動開始に応じたタイミングでどのような活動を示すか調べることで、小脳と大脳基底核から入力する情報が大脳皮質の層構造内においてどのように処理されているのか、層構造の機能的役割を明らかにする。 本年度は、2頭のサルにおいて、認知行動タスクをした際の神経活動を1次運動野の1層から6層まで記録しており、そのデータ解析を行った。視覚刺激に応じて右腕を動かす運動を開始する直前に、神経発火頻度が上昇する細胞(A)と、減少する細胞(B)、また両方の極性を示す細胞(C)の3群が見つかった。これらの神経細胞が層構造のどの深さに局在しているのかマップ図を作成し、cross correlation解析によって、各細胞群の発火タイミングの相関性を解析した。次年度では、これら層依存的な発火パターンが、神経集合電位の位相とどのような関連があるかを調べることにより、個々の神経発火パターンと細胞集合の電位との関連、そして行動との関連性を明らかにする。これらの研究によって、運動を誘発するための層依存的な情報処理機構を明らかにする。本年度の研究成果は、日本神経科学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大脳皮質の層依存的な神経発火パターンが運動の誘発にどのように関与しているのかを明らかにするために、すでに記録したデータを解析しており、その研究成果を、2023年8月に開催された日本神経科学大会にてポスター発表した(タイトル:Depth dependent sensorimotor interaction rules in primary motor cortex during cognitive behavior).この解析結果について、来年度に論文投稿するための作業を進めている。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、実験動物より作製した脳標本を用いて、電極の深さ方向の位置を確認する組織学的解析を行う。そして、学会発表と論文投稿の準備を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は、おもにデータ解析を行ったため、実験に必要な物品を購入する機会が少なかった。次年度は組織学的解析を行うことから、免疫染色に必要な実験機材を揃えることに本研究費を使用する。また、学会参加費と、論文投稿費に本経費を充てる。
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