2023 Fiscal Year Research-status Report
超音波ニューロモデュレーションの作動メカニズムと生体への影響の解明
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23K14312
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
松下 有美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 博士研究員 (40908430)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超音波 / ニューロモデュレーション / 神経細胞 / 神経活動制御 / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
生体透過性や時間・空間分解能に優れ、画像診断や疾患治療に医療応用されている超音波を神経活動制御 (ニューロモデュレーション)へと技術応用することを目的とし、その詳細な作用メカニズムの解明を行なった。当該年度は以下を実施した。 1. 超音波照射と同時に細胞活動の画像解析が可能な実験系の構築 2. 上記実験系を用いて、マウス脳由来の初代培養ニューロンにおける超音波刺激に対する細胞応答の分子メカニズムの解明。 1について、倒立型蛍光顕微鏡と超音波刺激装置及び超音波トランスデューサーを組み合わせ、独自の画像計測システムの構築に成功した。この装置を用いることにより、超音波照射を行うと同時に細胞内のカルシウム動態変化を蛍光イメージングにて取得することが可能となった。2について、構築した実験系を用いて、マウス脳由来初代培養ニューロンに超音波を照射すると一過性に細胞内カルシウム濃度が上昇することを見出した。このことは超音波照射により細胞活動が賦活化されることを示している。さらに薬理学的実験及び遺伝学的実験により、この細胞内カルシウム上昇は細胞膜上のカルシウムチャネルを介した細胞外からのカルシウム流入に依存していること、特定の機械刺激感受性イオンチャネルが一連の細胞応答の起点となっていることを明らかにした。さらに共同研究により、マウス生体脳においても当該イオンチャネルが超音波ニューロモデュレーションに重要な役割を担っていることをin vivo生理学実験にて実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験系の構築が順調に進んだため、難なく超音波ニューロモデュレーションの分子メカニズム検討に着手することができた。その分子メカニズムについても特定のイオンチャネルが超音波ニューロモデュレーションに重要であることを見出し、複数回の学会での発表した後に研究成果をまとめ、現在は国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究にて見出した超音波感受性イオンチャネルを利用し、培養細胞や特定の脳領域に当該イオンチャネルを遺伝学技術を用いて異所性発現させて超音波による神経活動操作 (ソノジェネティクス)が可能であるかを検証する。
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Causes of Carryover |
実験システム構築が思いのほか順調に進んだため、当該年度は分子メカニズム検討の実験を重点的に行なった。必要以上の消耗品購入が無かったため、物品費等を想定以上に抑えることができた。また論文執筆に時間を割いていたため、国外学会への参加を見送ったことから、旅費も想定より少なかった。今年度は論文投稿費、国外学会への参加費、新たな実験系を立ち上げるための消耗品費等が必要となるため、次年度使用額と合わせて今年度使用する予定である。
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