2023 Fiscal Year Research-status Report
構造認識を駆動力にする触媒反応の開発と位置選択制御への展開
Project/Area Number |
23K14325
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
澤崎 鷹 和歌山県立医科大学, 薬学部, 助教 (20911671)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アミロイド / 触媒反応 / 基質選択性 / アミノ基修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分子間相互作用の形成による近接効果が促進する触媒系を創製することで、従来の官能基間の結合を基軸にした触媒系では実現しえない選択性をもつ反応の実現を目指している。 初年度では、最頻出反応の一つであるアミノ基修飾化反応を構造認識を駆動力にして促進される反応系の確立に取り組んだ。そこで、ペプチドが凝集しβシートが垂直方向に蓄積した高次構造(クロスβシート)を有する凝集体、すなわちアミロイドは、アゾベンゼンなどの親和性のある分子骨格が種々報告されているため、アゾベンゼン骨格を有する基質に対してアミロイドが触媒するような反応系を設計した。種々のアミロイドを検討した結果、NFGAILヘキサペプチドからなるアミロイドが基質の結合を起点に基質のアミノ基修飾化を促進できることを見出した 。本触媒系は、基質のアミロイドへの親和性と反応収率に正の相関をもつ。また基質とアミロイドの複合体形成によって、基質のアミノ基とアミロイドのフェニルアラニン―グリシン間アミド結合のカルボニル酸素が近接する結果、アミノ基が活性化されることが明らかにされた。反応機構に従い本触媒系は基質選択性が高く、アミノ基を複数有するタンパク質存在下でも、アミロイドと結合する基質が有するアミノ基のみを選択的に修飾化できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミロイドとクロスβシートに対して親和性のある分子との分子間相互作用が合成上価値の高いアミノ基修飾反応を促進することを実証し、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
開始年度で確立したアミロイド触媒系を基盤にした位置選択的反応の確立に取り組む。アミロイド結合部位に近接した官能基はアミロイド触媒による作用を受ける一方で、遠隔位の官能基は作用を受けないことが期待される。アミロイドや基質構造の最適化を推進することで、化学変換の位置選択性獲得のための革新的なアプローチを創出する。
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Causes of Carryover |
構造認識を駆動力にする触媒反応系の確立が滞りなく推進できたため、次年度に実施する計画である位置選択的な反応への研究をより重点的に研究するために必要な試薬購入に充てる。
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