2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K14328
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
大類 彩 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (90845116)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | オレキシン / オレキシン1受容体 / 拮抗薬 / スピロインダノピペリジン / 創薬化学 / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
オレキシン受容体は睡眠や覚醒を司っており、オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の2つのサブタイプが存在する。近年、OX1Rが情動性脳機能にも関与していることが明らかになり、OX1R拮抗薬は薬物依存や不安等の改善薬としても期待され臨床研究が進められてきた。しかし、国内で上市されているものはOX1R /OX2R非選択的拮抗薬であるスボレキサントとレンボレキサントのみであり、OX1Rに選択的なリガンドの創製は重要な課題の一つである。本研究の目的は、自身が見出したOX1R拮抗作用を有するスピロインダノピペリジン化合物の構造最適化を行い、新規OX1R選択的拮抗薬の創出を目指すことである。当該年度は、主に本化合物郡のアミド側鎖の検討、ピペリジン窒素原子上置換基に着目して誘導体を種々合成し、それぞれ活性評価を行った。 種々の構造活性相関の結果、N-Hアミド結合をもち、側鎖末端に二環式芳香環をもつ化合物でOX1R活性が向上することがわかった。さらに、ピペリジン窒素原子上の置換基についてスルホンアミド以外の置換基では活性が大きく減弱し、ベンゼンスルホニル基と同様の嵩高さをもつことが重要であることが示唆された。最終的にアミド側鎖末端にN-メチルインドール部位をもち、ピペリジン窒素原子上にベンゼンスルホニル基もしくはチオフェンスルホニル基をもつ化合物が、リード化合物と比較していずれも約45倍高い拮抗活性を示すことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗をまとめると以下の通りである。 ・N-Hアミドにメチル基を導入したところ、活性が消失したことからアミドのN-H結合が活性に重要な役割を果たしていることが示唆された。 ・アミド側鎖末端に二環式化合物を導入すると活性が大きく向上し、奥側の芳香環に置換基を導入すると活性が低下する(例えばインドリル基の4-7位への置換基導入は活性の低下を招く)ことも判明した。 ・ピペリジン窒素原子上の置換基として、アルキル基、アミド基を導入すると活性が著しく低下することから、スルホニル基がOX1R拮抗活性に重要であることが判明した。 ・スルホンアミドについて検討したところ、メチル基へ変更した化合物やベンゼン環上にメトキシ基、ニトロ基等を導入した化合物では活性が低下した。一方で、2位にフッ素原子を導入した誘導体およびチオフェンへと変更した誘導体ではもとの化合物と同等の活性を示した。これらの結果から、ピペリジン窒素原子上の置換基はベンゼンスルホニル基と同様の嵩高さをもつことが重要であることが示唆された。 さらに現在までに最も高い活性を示した化合物について、立体化学が拮抗活性に与える影響について調査すべく、不斉合成も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、N-HインドールにMe基を導入すると活性が大きく向上することから、インドールの窒素原子上の置換基について検討する。次に、インダン環がOX1Rとの結合においてどのような影響を及ぼしているかを調査すべく、ベンゼン環上への置換基導入を検討する。 また、ドッキングシミュレーションを用いてOX1R内におけるリガンドの配座を解析し、本化合物のどの部位がOX1Rと相互作用をしているかを考察し、構造最適化に反映させる。最終的に、最も高い活性を示した化合物について不斉合成を行い、立体化学が拮抗活性に与える影響について調査する。
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Causes of Carryover |
本年度は様々な誘導体を合成するべく、主に試薬代や溶媒代・シリカゲル代等に充て、そのほとんどを消費した。わずかに残った残額は、引き続き試薬及び溶媒代に使用する予定である。
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