2023 Fiscal Year Research-status Report
脳-骨髄相関から迫る、新規造血システムモデルによる慢性骨髄性白血病の病態解明
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23K14354
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沖川 沙佑美 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (60883303)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨髄性白血病 / マウス / 神経システム |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄性白血病は、造血幹細胞の遺伝子異常が原因とされる造血幹細胞腫瘍であり、がん化した白血病細胞が骨髄微小環境内で増殖する。これまでの研究は、骨髄内に存在する細胞種のみに留まった限定的な研究であり、組織間コミュニケーションを基盤とした解析に至っていないため、骨髄性白血病病態の全貌は未だ不明点が多い。本研究は脳と骨髄との組織間ネットワークに焦点を当て、「神経システムがどのように骨髄微小環境を制御し、白血病病態を生み出すのか」を明らかにする事を目的とする。白血病細胞が増殖する骨髄内について、これまで議論されてきた造血系システムだけでなく、神経系システムも加えて議論することで、骨髄性白血病が生み出される詳細なメカニズムに迫る。 本年度は、骨髄性白血病モデルマウスを作成し、末梢神経系および中枢神経系の組織学的解析を実施した。末梢神経系に関しては、骨髄に投射する神経系(TH (tyrosine hydroxylase)陽性神経細胞とCGRP(calcitonin gene-related peptide)陽性神経細胞)に焦点を当てた。骨髄サンプルの脱灰プロセスの最適化、イメージングの条件や可視化した神経線維のintensity解析を最適化した。骨髄へ投射する神経の軸索/軸索末端を可視化し、これらを数値化することで、骨髄内の神経支配を評価する手法の確立に成功した。一方中枢神経系に関しては、作成した白血病マウスにおける脳活動を組織学的解析によりモニタリングし、脳領野ごとに解析・評価することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は骨髄性白血病モデルマウスを作成し、骨髄内神経投射および中枢神経系の組織学的解析に成功した。加えて骨髄を標的としたマイクロインジェクションに関しても条件検討を進めた。初年度の目標を達成できたので、本年度は順調に研究が進捗したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、骨髄性白血病マウスにおける骨髄内の末梢神経支配および脳の神経活動を評価することに成功した。組織学的解析によりこれらを評価したが、再現性の確認およびより詳細なサブ解析は今後実施予定である。加えて神経活動をモニタリングできるマウスラインを新たに導入し、空間情報を保った脳活動イメージングを実施する。またこれらの脳領域や骨髄に投射する神経系の活動を人工的に操作した際、白血病病態がどのように変化するのかを明らかにすることで本研究課題に挑む。
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Causes of Carryover |
次年度は、本年度実施した中枢神経系および末梢神経系の組織学的解析の再現性確認やより詳細な解析を実施する。詳細な解析結果から神経細胞種や脳領域を絞り、次年度の研究を「今後の研究の推進方策」に記載した通り遂行する。これらは薬力学的実験およびウイルスベクターを用いた神経活動の操作、脳や骨髄のイメージングによりアプローチする予定である。そのため次年度は、白血病モデルマウス作成や組織学的解析に加え、薬力学的実験、ウイルスベクター作製、骨髄および脳のイメージングのための備品・消耗品に予算を使用予定である。
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