2023 Fiscal Year Research-status Report
セロトニン系抗うつ薬による神経回路再構築のメカニズム
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23K14359
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
樋口 裕城 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (20852982)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | セロトニン / 抗うつ薬 / 神経新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で取り上げる課題は、精神疾患であるうつ病の主流な治療薬が示す不安定な有効性であり、その原因として抗うつ薬の作用メカニズムの連鎖反応過程に存在する個人差をもたらす因子(分子メカニズム)を仮定している。したがって、本研究の目的は、抗うつ薬作用の分子神経回路を明らかにすること、これによって抗うつ薬の作用効率を上げ、個人の遺伝的・生理的状態に合わせたオーダーメイド医療の確立に寄与することである。
現在までに、本研究計画の1つ目の目標である神経新生関連因子の網羅的遺伝子発現パターン解析に取り組んだ。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によって引き起こされる神経新生の促進とその連鎖反応の分子メカニズムを明らかにするため、網羅的検討として、SSRIを投与された成体マウスの海馬における神経新生関連因子の連鎖反応の神経回路レベルの全体像を、遺伝子発現パターンとして把握しようと試みた。代表的なSSRIであるフルオキセチンをマウスに4週間慢性投与後、海馬と脳室下帯(神経新生の局在部位)および帯状回(5-HT投射の皮質対照群として)を取り出し、これらの組織から抽出したRNAを用いて次世代シーケンス解析を実施した。その結果、SSRIの効果を媒介する因子として、神経栄養因子・成長因子の関与が示唆された。今後、更に詳細に次世代シーケンス解析データの分析を進める。
また、本研究テーマに密接に関係する総説を執筆し、本年度中に国際誌(Current Research in Neurobiology)に受理され公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施環境の変化および円高などの影響による研究用資材の価格高騰により、進捗が鈍化した。
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Strategy for Future Research Activity |
取得した次世代シーケンス解析のデータ分析を進め、論文としての公開に繋げる予定である。
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Causes of Carryover |
研究環境の変化・円高などの影響による研究用資材の価格上昇により、研究計画の見直しを実施中である。その中で物品購入の予定が変更されたため次年度使用額が生じている。次年度以降、遺伝子発現解析を進めるにあたり必要な資材・ソフトウェアなどの購入に使用する予定である。
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