2023 Fiscal Year Research-status Report
肝線維症における肝星細胞のカルシウムシグナル制御機構の解明
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23K14414
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
近藤 るびい 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (60962511)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肝星細胞 / カルシウムシグナル / 線維化 / イオンチャネル / 肝硬変 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝線維化(肝リモデリング)とは、ウイルスや肥満などによる慢性的な炎症に起因し、細胞外基質の異常な産生と蓄積による瘢痕化を特徴とする病態である。肝線維化の進展度が肝疾患患者の生命予後を最も強く規定することから肝線維化に対する治療薬が期待されている。本研究課題では細胞外基質の主要な産生源となる肝星細胞に着目し、肝星細胞のカルシウムシグナル制御機構を明らかにすることで肝線維化進展機序を解明することを目的とした。 今年度はヒト不死化肝星細胞株LX-2およびマウスより単離した肝星細胞を用いてカルシウムチャネルの発現をリアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法、免疫細胞染色法により解析した。その結果、カルシウム遊離活性化カルシウム(CRAC)チャネルの分子実体であるOrai/STIMが肝星細胞に発現していた。またLX-2細胞においてストア作動性カルシウム流入が起こり、この細胞内カルシウム濃度上昇はCRACチャネル阻害薬のBTP-2およびOrai1選択的阻害薬のCM4620により著明に阻害されることを明らかにした。また、これらの阻害薬は肝星細胞の増殖を抑制し、肝星細胞活性化マーカーであるα-smooth muscle actinやⅠ型コラーゲンの発現を低下させた。さらにOrai/STIM複合体と相互作用する分子の活性化による発現上昇をRNA-Seq解析により見出した。これらの知見から肝星細胞のカルシウムシグナルと線維化の中核を担うカルシウム透過性チャネルの分子実体はOrai/STIM複合体である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はLX2細胞およびマウス肝星細胞においてCRACチャネルの分子実体であるOrai/STIMが高発現していることを明らかにした。またLX2細胞においてストア作動性カルシウム流入が起こり、この細胞内カルシウム濃度上昇はCRACチャネルの阻害薬で阻害されること、CRACチャネル阻害薬が活性化マーカーの上昇と細胞増殖を抑制することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はin vitroの解析により、活性化型肝星細胞にOrai/STIMからなるCRACチャネルが機能発現しており、これらを阻害することで活性化マーカーの発現と細胞増殖が有意に低下することを明らかにした。来年度は胆管結紮モデル、四塩化炭素モデル、MASHモデルなど病因の異なる肝線維化モデルマウスを作製し、CRACチャネル阻害薬の効果をin vivoで検討する。線維化の評価にはHE染色、シリウスレッド染色を用いる。またRNA-Seq解析によりCRACチャネルの下流シグナル分子を探索する。さらに、CRACチャネルの下流分子として知られているカルシニューリン―NFAT経路については共焦点蛍光顕微鏡を用いて細胞内局在や核内移行を明らかにする。
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Causes of Carryover |
所属大学の実験動物飼育施設が設備更新のため閉鎖された期間があった。このため動物を使用する実験の一部を次年度に行う予定に変更しそれに伴い、次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(26 results)