2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Notch1 involvement in the left-side heart development
Project/Area Number |
23K14429
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉原 雅大 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60963618)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | Notchシグナル伝達経路 / 心臓 / 遺伝子組換えマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
Notch1受容体は左室流出路の形態異常に関わると報告されているが、Notch1シグナルがいつ、どこではたらいているのかは明らかでない。そこで、本研究では、発生期の心臓におけるNotch1シグナルの細胞レベルでの可視化を試みる。具体的には、スイス連邦工科大学ローザンヌ校Freddy Radtke教授から遺伝子組換えマウス(Notch1-Gal4VP16マウス)の供与をすでに受けており、これに、すでに筑波大学で樹立したレポーターマウス(UAS-Cre-T2A-miRFP670マウスおよびR26GRRマウス)をかけあわせる。これにより、内因性リガンドと結合した人工Notch1-Gal4VP16受容体から人工転写因子Gal4-VP16が切り出され、遺伝子組換え酵素Creおよび近赤外光蛍光タンパクmiRFP670が発現する。Creのはたらきにより、R26GRRエレメントから蛍光蛋白tDsRedが恒常的に発現する。すなわち、Notch1シグナルの履歴がtDsRedで標識される。 また、Notchシグナル経路の変調(側方抑制阻害)による心発生を影響を検証するため、Cre存在下でNotch受容体リガンド(Dll4)を過剰発現する遺伝子組換えマウス(CAG-cat-Dll4)を上記マウス系にかけあわせて表現系解析する予定である。 2023年度にNotch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; R26GRR成獣マウスの心臓で断面標本を作製したところ、その断面ではtDsRedの発現は認められなかった。他方で、発生期心臓(静脈洞)から遊走してくるとされる肝内類洞内皮細胞はtDsRed陽性であった(未発表データ)。そのため、心臓全体での網羅的な解析が今後必要と考えられる。なお、2023年度には、査読付き国際英文科学雑誌に原著論文1編と総説1編を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度にNotch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; R26GRR成獣マウスの心臓で断面標本を作製したところ、その断面ではtDsRedの発現は認められなかったため、心臓全体での網羅的な解析が今後必要と考えられる。他方、Notchシグナル伝達経路の変調を目的としたDll4過剰発現では、心臓をはじめとする他系統(神経系、腎泌尿器系、消化器系)にNotch1シグナルが関与していることから、胎性致死を予測していた。しかし、実際には、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; CAG-cat-Dll4マウスは出生し、成獣期においていまだに表現型が明らかでない。そのため、区分を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはNotch1シグナルがはたらいている細胞を同定するために、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; R26GRR成獣マウスの心臓について網羅的にtDsRed発現細胞を検索する。tDsRed陽性細胞が存在した場合、胎仔期のNotch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670マウスを掲示的に追跡し、Cre陽性細胞(Notch1シグナルを解析時点で受けている細胞)の同定を試みる。その後、Notch1シグナルの関与が示唆される部位を中心に、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; CAG-cat-Dll4マウスの詳細な表現型解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画段階では、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; CAG-cat-Dll4マウスが胎生致死となることを予測しており、発生中期胚を用いた解析を見越したマウス購入費やマウス飼育費、理化学試薬費を計上していた。しかし、2023年度中の解析で、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; CAG-cat-Dll4マウスが出生して成獣まで成長したため、当該年度中に予定していた解析やそのための支出に変更を生じた。 2024年度には、Notch1-Gal4VP16; UAS-Cre-T2A-miRFP670; R26GRRマウスの解析を行い、その結果を踏まえたより詳細な構造解析を行うため、2024年度に研究費を繰り越す必要が生じている。具体的には、マウスの繁殖や理化学消耗品(スライドガラス、抗体など)に使用する予定である。
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