2023 Fiscal Year Research-status Report
発達期神経における細胞内分解の包括的理解に向けた非典型オートファジー経路の研究
Project/Area Number |
23K14453
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 悠紀 大阪大学, 大学院連合小児発達学研究科, 助教 (90794925)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞内分解 / 細胞内恒常性 / リソソーム / オートファジー / 非典型オートファジー / DUMP / プロテオスタシス / 神経発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
リソソームは細胞内最大の物質分解の場であり、生体高分子のリソソーム性分解の破綻は多くの疾患の原因となることが知られている。リソソームに細胞内の基質を運び込み分解する経路のことを広義にオートファジーと総称し、これまでマクロオートファジーと呼ばれる経路の研究が精力的に展開されてきたが、一方で他の経路、いわば非典型オートファジー経路の研究は相対的に立ち遅れていた。採用者(藤原悠紀)はこれまで、核酸やタンパク質をリソソームが直接取り込み分解する新たな仕組みを発見し、このようなリソソームによる高分子の直接取り込み経路を ”direct-uptake-via/through-membrane-protein” (DUMP) と新たに定義し、報告している。DUMPにおいてはリソソーム膜タンパク質SIDT2が基質核酸およびタンパク質の取り込みを担うと考えられる。近年、発生期や発達期の神経において既知のオートファジー経路やリソソーム性分解の機能不全が重大な意義を持ち、神経発達症等の病態形成に関わりうることを示唆する報告があるが、これらの報告もマクロオートファジーと神経発達の関係に着目したものがほとんどであり、非典型オートファジーと神経発達に着目した研究はほとんど見られない。そこで本研究課題で採用者は発達期神経における非典型オートファジーの果たす役割に着目し、その生理的・病態生理的意義や制御機構の解明を目的とする。採用者はリソソームへの核酸の取り込みにおける重要因子のSIDT2とLAMP2Cが共に自然免疫応答反応の下流として惹起されること等を見出し、筆頭著者および共責任著者として論文を執筆し、RNA Biology誌に掲載された。また採用者は発達過程の神経細胞におけるリソソームやリソソーム性タンパク質分解の挙動や重要性に関する新たなデータを取得し、これらについても現在論文を投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リソソームは細胞内最大の物質分解の場であり、生体高分子のリソソーム分解の破綻は多くの疾患の原因となることが知られている。採用者(藤原悠紀)はこれまで、核酸やタンパク質をリソソームが内腔へと直接運び込み分解する新たな仕組みDUMPを発見し、報告してきた。まず採択者は本経路によるリソソームへの核酸の取り込みに関わる因子のSIDT2とLAMP2Cが共に二本鎖RNAアナログpoly(I:C)の細胞内への導入により特異的に惹起されること、そしてその誘導の上流の少なくともひとつに自然免疫応答において働くパターン認識受容体MDA5が存在すること等を見出し、筆頭著者および共責任著者として論文を執筆し、論文はRNA Biology誌に掲載された。また採用者は発達過程の神経細胞におけるリソソームやリソソーム性タンパク質分解の挙動や重要性に関する新たなデータを取得し、これらについても現在論文を投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は既に見出した自然免疫応答因子によるSIDT2、LAMP2Cの発現誘導の分子メカニズムの詳細や神経の発達過程にそれらが何らかの影響を及ぼしうるか、またその他にDUMPの誘導メカニズムが存在するかどうか探索を続けると共に、リソソームによるタンパク質分解全体の神経発達に対する影響を明らかにしたのちは複数存在するオートファジー経路のうちどの経路が特に重要な意義をもつか、また各経路がそれぞれどの時期にどの程度の役割を果たすのか等について検討を進めてゆきたい。
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