2023 Fiscal Year Research-status Report
「免疫-脂質代謝-ウイルス」を基軸とした抗ウイルス免疫応答の新規制御法開発
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23K14552
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
菅野 敏生 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 研究員 (90849291)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | cGAS-STING / 抗ウイルス応答 / 脂質合成 / T細胞 / 免疫 / 脂質代謝 / インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、T細胞の脂質代謝経路を制御することで、抗ウイルス応答が誘導されることがわかっている。本研究案では「免疫-脂質代謝-ウイルス」を基軸とした抗ウイルス免疫応答の新規制御法開発」を目的に、3つの実験を計画した。進捗・結果については下記の通りである。 1: STING活性を司るT細胞特有の脂質スイッチシステムの分子メカニズム解明 → STINGの活性化には、細胞内核酸を由来とするcGAMPがリガンドとして重要な働きをもつ。多くの検討を重ねることで、脂質スイッチシステムにより、細胞内に、cGAMPの由来となる核酸が蓄積することが明らかになった。また、この核酸がどこから来ているのか?その産生源の解析をしたところ、自己の核ゲノムを由来としていることがわかった。 2: 宿主脂質代謝調節によるウイルスの脂質利用制限の作用点解明 → 脂質代謝阻害剤を感染前・後などのタイミングを変えて使用することにより、ウイルスの感染サイクル(吸着/侵入/複製など)の中でも、吸着や侵入などの、初期の感染イベントに作用していることがわかった。 3: ウイルス感染症モデルを用いた「免疫-脂質」による抗ウイルス応答の検証 → 本項目では項目1,2 での抗ウイルス応答について、マウス生体で検証を行うものである。脂質スイッチシステムによりI型IFNを誘導した時に、I型IFNの作用点である受容体を中和抗体により阻害したところ、マウスの生存率は中程度に減少した。このことは、脂質代謝阻害剤によるマウスの抗ウイルス応答の増強は、I型IFN応答に依存していることを示している。また、獲得免疫応答に関わるT細胞やB細胞の機能を欠損した免疫不全マウスにおいても、脂質代謝阻害剤はマウスの生存率を中程度にまで改善した。このことより、脂質代謝阻害剤は非免疫応答を介して、ウイルス活性を増強している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1: STING活性を司るT細胞特有の脂質スイッチシステムの分子メカニズム解明 」については、なぜ脂質代謝の制御によりSTINGが活性化されるか?そのトリガーになりうる分子標的候補を見つけた。現在は、この分子標的に着目をした解析を行うところである。 「2: 宿主脂質代謝調節によるウイルスの脂質利用制限の作用点解明」については、脂質代謝の抑制による抗ウイルス応答の抑制では、ウイルス感染の初期(吸着・侵入)で特に強く作用することがわかっている。現在は、インフルエンザウイルスの標的細胞に着目をした解析を立ち上げるところである。 「3: ウイルス感染症モデルを用いた「免疫-脂質」による抗ウイルス応答の検証」については、脂質代謝阻害剤による、抗ウイルス応答の誘導における、I型IFN産生の寄与度や非免疫応答を増強することなどについて検証を行えた。現在は、脂質代謝阻害剤が、記憶免疫の増強を行うかについて、ウイルス再感染モデルを行なっているところである。 1, 3は概ね順調に進行し、2は、今後具体的なメカニズムを明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「免疫-脂質代謝-ウイルス」を担う、分子標的候補を見つけたため、この候補と脂質代謝の関連性について、主にウエスタンブロットや免疫蛍光染色法などの、分子細胞生物学的な手法により検証を行う。また、これらの実験により、この候補タンパク質の抗ウイルス応答における寄与度が高いようであれば、遺伝子改変マウスの作成を検討する。また、脂質代謝阻害剤により、非免疫細胞で抗ウイルス応答が誘導される、その詳細な制御機構について検証を行う。具体的には、インフルエンザウイルスの標的細胞である線維芽細胞をセルソーターにて分離・回収を行い、その後、細胞培養や、これらの細胞を標的として単一細胞RNAシーケンス解析を行う。これらの研究を行いながら、脂質代謝阻害剤による抗ウイルス応答の誘導は、どのような種類のウイルス種にまで作用しうるか、ウイルスの構造(DNA/RNAゲノム、エンベロープの有無)に着目をして、解析を行う。
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Research Products
(6 results)