2023 Fiscal Year Research-status Report
老化CAFsにおける翻訳制御を介したSASP誘導およびがん促進機構の解明
Project/Area Number |
23K14580
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
菅原 祥 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化研究部, 特任研究員 (60870144)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞老化 / CAFs / 翻訳 / Ribosome profiling |
Outline of Annual Research Achievements |
がん微小環境中にはCancer-associated fibroblasts (CAFs)が存在し、がんの進展に寄与することが知られている。様々なストレスによってCAFsに細胞老化が誘導されると、Senescence-associated secretory phenotype (SASP)を介してがんの悪性化を助長することがわかってきた。我々のこれまでのトランスクリプトーム解析やプロテオーム解析の結果から、老化細胞では必ずしもmRNAとタンパク質の発現プロファイルが一致しておらず、翻訳レベルでの調節があることが示唆されていが、その調節機構はほとんど不明であった。そこで本研究では、老化細胞における翻訳を介したSASP因子の調節機構を明らかにし、その制御方法を検討することで、老化した CAFsが関与するがんの病態の理解と、CAFsを標的とした治療戦略の開発へとつなげることを目的としている。 我々は老化細胞において、翻訳を介して発現が制御されている遺伝子群を同定するために、Ribosome profiling法を用いたトランスラトーム解析を行なった。その結果、老化細胞で翻訳が特異的に低下している遺伝子群の存在が明らかになった。続いて、他の方法でもこれらの遺伝子の翻訳が低下していることを実証するために、Fluorescent noncanonical amino acid tagging (FUNCAT)法を用いて解析を行なった。この実験の結果、こちらの方法でも老化細胞において特定の遺伝子群の翻訳が低下していることが示唆された。更に、これらの遺伝子群の翻訳に重要な遺伝子Aの発現が、老化細胞では低下していることが示唆されるデータを得ていることから、老化細胞における遺伝子Aの発現低下が、特定の遺伝子群の翻訳低下につながっている可能性があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化細胞において翻訳を介して発現が制御される遺伝子を同定するためにRibosome profiling法によるトランスラトーム解析を行った結果、老化細胞では特定の遺伝子群の翻訳が低下していることが示唆された。また、FUNCAT法を利用した解析でも、老化細胞における特定の遺伝子群の翻訳の低下が示唆されたことから、老化細胞において翻訳を介して発現が制御される遺伝子群の同定に至ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、老化細胞ではある特定の遺伝子群の翻訳が低下していることが示唆されている。今後はこの翻訳変化のメカニズムの解析や、この変化が老化細胞の生存やSASP因子の発現に寄与しているかを検討していく。今回同定された遺伝子群の翻訳制御には、遺伝子Aの発現が重要であることが知られているため、遺伝子Aの発現変化が、老化細胞における翻訳の変化に重要である可能性を探っていく。遺伝子Aの過剰発現などによって翻訳が改善される場合は、その時の老化細胞の生存やSASP因子の発現にどのような影響を与えるかを検討していくことで、老化細胞における翻訳を介した遺伝子発現制御の意義を明らかにすることを目指す。
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