2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K14677
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 将史 北海道大学, 医学研究院, 助教 (80907717)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 小脳 / 非ヒト霊長類 / 光遺伝学 / リズム知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は初めに、一定の時間間隔で繰り返される視覚刺激の遅延を検出してボタン押しで答えるようサルを訓練し、本課題遂行中の動物の小脳歯状核から記録を行なった。申請者の先行研究と同様の、リズム知覚中に周期的な活動を示すニューロンを複数記録した。視覚刺激の遅延(リズム逸脱)を検出しそれに反応した試行と、反応できなかった試行に分けてこれらニューロンの活動を比較したところ、遅延刺激が本来提示されるタイミングにおける活動の大きさが、遅延を検出しそれに反応した試行において有意に高いことを明らかにした。 次に、記録実験が終了したサルに対して、小脳に対して光遺伝学的な操作したときの視覚刺激の遅延の検出率への影響を調べた。サル小脳歯状核に投射する半月小葉(ClusⅠ,Ⅱ)へプルキンエ細胞特異的なL7プロモータ下にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV9)を接種した。接種から十分時間が経過した後、ChR2の発現を調べるために接種部位と小脳歯状核へオプト電極(神経活動記録に用いる金属電極に、レーザー光照射用の光ファイバーを接着したものを作成)を刺入し光刺激によるニューロン活動の変化を調べた。申請書の予備実験と同様、小脳皮質へのレーザー光照射によって小脳皮質の神経活動の興奮、および小脳歯状核へのレーザー光照射(プルキンエ細胞の終末刺激)によって小脳歯状核の神経活動が抑制されることが確認できた。今後はレーザー光照射のタイミングや長さなど最適なパラメータを探り、光刺激による視覚刺激の遅延の検出率への影響を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚刺激の遅延(リズム逸脱)に関連する小脳歯状核ニューロン活動の記録に関して、現在1頭のサルから記録を終了している。論文化のため最低2頭のサルから記録が必要であるが、新たに1頭のサルにおいて記録を始める準備が完了している。 小脳に対する光遺伝学的な操作に関して、上記のニューロン記録実験を終了したサルの半月小葉(ClusⅠ,Ⅱ)へチャネルロドプシン2(ChR2)を発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV9)を接種した。小脳皮質および小脳歯状核のニューロン活動がレーザー照射により操作できることを確認し、すでに光刺激による視覚刺激の遅延の検出率への影響を調べる段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに1頭のサルから視覚刺激の遅延(リズム逸脱)に関連する小脳歯状核ニューロン活動を記録する。本年度は実験動物や多点電極を購入し、効率よくデータを集める。 さらに、半月小葉(ClusⅠ,Ⅱ)にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させたサルに対し、課題中に様々なパラメータでレーザー光照射を行うことでその影響を調べる。光刺激の実験は半年以内に終了し、免疫染色によってChR2の発現を確認する。 今年度は10月にシカゴで開催される北米神経科学学会に参加し、本研究で得られた成果を発表する予定である。現地で国外のトップレベルの研究者と議論を行うことによって、本研究の課題や改善点などを明らかにするとともに、自身の研究の立ち位置を確認する。
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Causes of Carryover |
遅延検出課題中のニューロン活動記録、光遺伝学的な操作による小脳皮質・小脳歯状核の神経活動の操作等について計画していた研究成果は概ね得られているが、国内・国際学会で発表するまでには至らなかった。R6年度10月に開催される国際学会(北米神経科学学会)において発表を予定している。また実験動物や記録電極もR5年度中は不測の問題が生じなかったこともあり研究実施に不足がなかったが、本年度は新たに実験動物や電極を購入し使用する予定である。
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