2023 Fiscal Year Research-status Report
非免疫細胞による多発性硬化症モデルの炎症起点・収束の分子機構を解明する
Project/Area Number |
23K14684
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西 李依子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 博士研究員 (90966178)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 線維芽細胞 / ゲートウェイ反射 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(Muitiple sclerosis: MS)は長期治療を必要とする難病であるが、免疫細胞を標的とした治療に伴う致死性感染症などの合併症が未だ解決すべき課題である。治療標的を非免疫細胞である血管構成細胞とし病巣選択的に制御することが可能となれば、より安全なMSの創薬基盤開発へ繋げることができる。我々はこれまでに、特異的神経回路の活性化が中枢神経系の特定血管部位に作用し免疫細胞の侵入口(血管ゲート)を形成する分子機構「ゲートウェイ反射」を報告してきた。本研究ではMSの病態に最も寄与する血管構成細胞種と病原性分子を特定する。 MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)マウスを、病原性CD4+T細胞を移入して作成し実験を行った。EAEマウスは単相性の経過を示すモデルであるため、発症前、ピーク、慢性期の各病期におけるEAEマウスと比較対照としての健常マウスの脊髄から細胞を単離し、シングルセル・シングル核RNA-seq解析を行った。中枢神経系の血管構成細胞である血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、ペリサイト、アストロサイトに着目し解析したところ、線維芽細胞が健常マウスと比較しEAEマウスにおいて顕著に増加すること、 線維芽細胞の一部クラスターで複数炎症関連分子とある特定分子の遺伝子発現が上昇していることがわかった。この特定分子が炎症を増幅する働きがあることは、in vitroの系にてRT-qPCRで確認している。このことから、特定分子を発現する線維芽細胞が炎症の起点となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各病期EAEマウスの脊髄を解析することにより、炎症の起点へ寄与する血管構成細胞種や病原性分子の候補を選出することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は多重免疫染色法を用い、特定分子を発現する線維芽細胞と血管内皮細胞や病原性T細胞との相互作用を解析する予定であったが、特定分子を検出し得なかったため通常の免疫組織染色に変更し解析をすすめている。さらに特定分子が表現型へ及ぼす影響を評価していく予定である。
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