2023 Fiscal Year Research-status Report
Disease modeling and drug discovery in amyloid-related imaging abnormalities of Alzheimer's disease
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23K14688
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松山 裕文 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80750025)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CAA / インフラマソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(Alzheimer disease, AD)の根本治療薬であるアミロイド抗体医薬による最大の懸念はアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities; ARIA)と呼ばれる炎症性変化である。脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy;CAA)の症例では、微小出血病変や白質病変等のMRI所見が見られるが、ARIAでも同様の所見が出現する。本研究では純粋なCAA発症モデルマウス(hAPP770NL(lox)/Tie2-Cre)を使用する動物実験として企画し、動物用のアミロイド抗体医薬を投与しARIAの発現を確認し、CAAにおけるARIAの誘発の病態機序を明らかにするものであった。しかし、CAA発症モデルマウスの繁殖が当初より遅れている状況であることから、本研究の先行研究としてC.B-17系統マウスを用いて慢性脳虚血負荷(bilateral common carotid artery stenosis; BCAS)をかけることによって、白質病変や虚血性病変を誘発させ、白質における組織学的評価や動物実験用のマイクロMRIによる画像評価を行った。その結果、BCAS後3週のマウス脳において、T2強調画像における虚血性病変および白質病変の出現を確認した。また、BCASにより白質膨大部や虚血巣にインフラマソームといった炎症関連タンパクの発現量上昇を組織免疫染色法やWestern blotting法で確認し、インフラマソーム阻害薬であるMCC950投与によりBCASモデルにおける炎症関連タンパクの発現量の有意な抑制効果があることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
脳虚血における神経細胞障害にインフラマソームなど炎症誘発が重要な役割を演じているとされているため、NLRP3やASCといった構成蛋白を標的に、免疫組織学的検討や定量評価を行った。C.B-17マウスを用いてBCASモデルを作成し、偽手術群とBCAS 3週群の2群に分け、マイクロMRIを用いて白質など虚血病変の画像変化を評価した。画像評価後に脳を取り出し、偽手術群、BCAS 3週群でNLRP3、ASC、IL-1βによる免疫組織学的検討や、Western blotting法による2群比較で統計学的評価を行った。その結果、免疫組織学的検討ではBCAS 3週群でNLRP3陽性細胞が白質や皮質など虚血巣に発現が上昇しており、Western blottingによる解析でも偽手術群と比較しBCAS群でNLRP3、ASC、IL-1βの発現量の有意な上昇を認めた。MRIでは、BCAS 3週群でT2強調画像における虚血性病変および白質病変の出現を確認した。MCC950はNLRP3やIL-1βの抑制作用がある化合物であるが、BCASモデルにMCC950(40mg/kg)を3週間腹腔内投与し、免疫組織学的検討により炎症関連物質の発現量を検討した結果、NLRP3、ASC、IL-1βは有意に減少することが観察された。また、Western blottingによる解析でもBCASモデルにおけるMCC950投与群において、これらのタンパクの発現量の有意な低下が観察された。マイクロMRIでは、MCC950投与群でvehicle群と比較しT2強調画像における虚血性病変および白質病変は減少していた。以上より、MCC950によるNLRP3阻害によりサイトカインの発現が低下し、白質など脳虚血巣の炎症を抑制させ、神経障害を軽減させる可能性が示された。しかし、CAA発症モデルでは検討できていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究では、慢性脳低灌流による脳虚血負荷をかけることでNLRP3などインフラマソームの活性化が示唆され、微小出血病変については検討中であるが、白質病変の形成にインフラマソームが関与し影響していると考えられた。また、MCC950による抗炎症作用により白質病変など脳虚血病変の抑制が確認できたため、CAA発症モデルマウスにおけるARIAの発症にもインフラマソームが関与していた場合、MCC950投与によってARIAの予防や治療に繋がると考えた。そのため、今後は本モデルマウスの繁殖を進めてゆき、N数が揃い次第マウスを2群に分け、月齢3ヶ月の時点でbapineuzumabのマウス用試薬と生理食塩水をそれぞれ静脈投与し、投与後1、2、3週間の時点で動物実験用のMRIでARIA発現の有無を確認する。bapineuzumabはARIA病態を誘発させるために投与する。投薬後、T2強調画像による浮腫性病変やMBsの所見が出現した時点で脳を取り出し、Aβ、NLRP3、IL1-β、ASCの発現分布を免疫組織学的に評価し、白質や血管中膜壁にインフラマソームが影響した無菌性炎症が生じていることを確認したい。また、脳MRIでARIAがbapineuzumab投与8週間を超えても確認出来ない場合は、CAA発症モデルマウスとAD発症モデルマウス(APP/PS1マウス)との交配や、或いは、CAAモデルにBCAS による慢性脳虚血負荷をかけることによって微小出血病変や白質病変がより誘発されやすいモデルマウスを作成し、同様の変化を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
CAA発症モデルマウスは18ヶ月齢で脳内に多発出血病変が出現するモデルのため年単位で期間を要すること、繁殖が難しく目標とするN数が揃わず研究進捗が遅れている状況であることから、本年度は先行研究としてC.B-17系統マウスを用いて慢性脳虚血負荷(bilateral common carotid artery stenosis; BCAS)をかけることによって、白質病変や虚血性病変の組織学的評価や画像評価を行った。 次年度は、引き続きCAA発症モデルマウスの繁殖を継続するため、マウスの飼育費やAPP/Cre発現を確認するために用いるDNA抽出用試薬やPCRのための試薬、ARIAを誘発させるマウス用試薬等に費用を用いる予定である。
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