2023 Fiscal Year Research-status Report
新規リピート伸長による筋萎縮性側索硬化症の分子病態の解明
Project/Area Number |
23K14758
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久米 広大 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (20592314)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / リピート病 / iPS細胞由来運動神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が同定した原因遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症患者(ALS)由来iPS細胞から作製した運動神経を用いた解析を行った。RNA-FISHにより、ALS患者由来の運動神経ではRNA fociの形成を認めた。また定量PCRを行い、原因遺伝子の遺伝子発現量は健常人由来運動神経と比較してALS患者で有意に増加を認めた。さらに、TDP-43タンパク質の免疫染色を行い、ALS患者由来運動神経ではTDP-43の細胞質内蓄積を認めた。これらのことから、この原因遺伝子変異は毒性機能獲得型としてALSの原因となっていると思われた。また、我々が作製したiPS細胞モデルはALSの病理を再現し、ALSの病態解明や創薬スクリーニングとして有用であると考える。 次に、ALS非発症者由来運動神経のリピート周囲DNAメチル化およびDNase I Chromatin Accessibilityの解析を行なった。バイサルファイトシーケンスにより非発症者ではリピート周囲DNAのメチル化が亢進していることが明らかとなった。また、この結果に一致して、DNase I Chromatin Accessibilityは低下していた。このことから、リピート周囲のDNAメチル化は疾患発症抑制的に働くことが推測された。 以上の結果から我々が同定した新規原因遺伝子変異は毒性獲得型変異であることが考えられた。治療戦略としては遺伝子発現をアンチセンスオリゴDNAやリピート周囲のDNAメチル化の誘導によって抑制することが有望である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した解析を終えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は治療法の開発に向けた研究を行う予定である。概要欄でも述べたように、アンチセンスオリゴDNAやリピート周囲のDNAメチル化の誘導により遺伝子発現抑制が本原因遺伝子変異を有するALSの治療法となりうる。iPS細胞由来運動神経に対して原因遺伝子の発現抑制を試み、RNA foci、TDP-43の蓄積、細胞死が改善するか解析する予定である。
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Causes of Carryover |
予定よりも少ない実験回数で充分なデータが得られたため残額が生じた。次年度予定している研究は試薬などの消耗品を多く必要とするため、これらに使用する予定である。
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