2023 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子重複による発達障害モデルマウスを用いた発症メカニズムの解明と治療応用
Project/Area Number |
23K14795
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川村 敦生 金沢大学, 医学系, 助教 (40898087)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 自閉症 / クロマチンリモデリング / 遺伝子重複 / モデルマウス / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの発達障害の発症には遺伝的要因が強く関与しており、患者を対象としたゲノム解析から発症に関連する単一遺伝子のコピー数の変化(欠失や重複)が多数同定されている。近年、クロマチンリモデリング因子CHD8が最も有力な自閉症原因候補遺伝子として同定され、世界中で大きな反響を呼んでいる。一方で、このCHD8の遺伝子座を含む領域の重複が発達障害の患者から相次いで発見されている。われわれはCHD8過剰発現マウスを作製して行動解析を行ったところ、過活動などの行動異常が観察された。そこで本研究ではこのCHD8過剰発現によるCHD8重複症候群モデルマウスを用いて責任病変を特定すると同時に、CHD8の分子機能を明らかにすることで、CHD8の量的変化による発達障害の発症メカニズムの解明と疾患治療への応用を目指す。 われわれはまずCHD8過剰発現マウスの脳組織を解析したところ、このマウスは小頭症を示し、大脳皮質の層構造に異常を示すことが判明した。また免疫組織学的解析によって、このマウスの神経前駆細胞は増殖と分化のバランスが変化しており、分化したニューロンの産生が減少することが明らかになった。次にCHD8過剰発現マウスの脳組織を用いてChIP-seqを行ったところ、CHD8は神経発生を制御する遺伝子のエンハンサー領域への結合が強くなっていることから、これらのCHD8のゲノム上への結合パターンの変化が神経発生に関する遺伝子の発現に影響を与えている可能性が示唆された。また、網羅的な行動バッテリーの結果、CHD8過剰発現マウスは過活動行動や不安様行動の減少を示し、これらの行動異常は薬剤の投与によって改善されることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CHD8過剰発現マウスの神経発生異常に関して分子および細胞レベルでの解析を進めた。また薬剤によりCHD8過剰発現マウスの行動異常が改善することを明らかにした。以上の結果から、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは主に大脳皮質の発生に着目して解析を行ったが、今後はそれ以外の脳領域の解析も進める。さらに、行動異常と関連のある責任病変を明らかにすることでCHD8重複による発達障害の病態を明らかにすることを目指す。
|
Causes of Carryover |
当初ヒト神経発生を模倣した脳オルガノイドを作製し、CHD8過剰発現/機能喪失が神経発生に与える影響について解析する予定であったが、その他の解析に遅れが生じたために昨年度内に行うことができなかった。この分の解析について翌年度の予算として使用する予定である。
|