2023 Fiscal Year Research-status Report
リポソームELISA法を用いた抗NMDA受容体抗体検出法の確立:構造生物学の臨床応用
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23K14799
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中神 由香子 京都大学, 学生総合支援機構, 助教 (60866185)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 自己抗体 / 血清 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症は若年期に発症することが多く、幻覚や妄想などの精神症状が特徴的な精神疾患です。この疾患の病理生理はまだ完全には解明されていませんが、近年、さまざまな病態との関連が明らかになってきました。その一つが自己免疫異常です。自己免疫異常とは、本来は体を病気から守る役割を持つ免疫システムが、誤って自身の組織を異物と認識して攻撃する状態を指します。 自己免疫異常の関与は、統合失調症に似た幻覚や妄想などの症状を引き起こすことがある抗NMDA受容体脳炎にも見られます。この脳炎は、抗NMDA受容体抗体によって引き起こされる脳炎です。この抗体が発見される以前は、一部の患者は誤って統合失調症と診断されていた可能性が高いと考えられています。一方で、抗NMDA受容体脳炎に対しては、統合失調症と異なり、免疫治療が効果的です。つまり、抗NMDA受容体抗体が発見されたことにより、統合失調症の一部(抗NMDA受容体抗体陽性群)には、新たな治療がもたらされたと言えます。 このように、統合失調症患者の血清から新規の抗体を同定することができれば新しい治療方法も開発できる可能性があることから、我々は統合失調症患者の血清から新規抗体を探索してきました。そして、ラットの脳組織を用いて二次元電気泳動を行い、統合失調症患者と健常者の血清から抗原候補を同定しました。その結果、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)の一部であるPyruvate Dehydrogenase E1 Subunit Alpha1(PDHA1)に対する自己抗体が統合失調症患者の血清中に存在することを明らかにすることができました。この発見は2020年に世界で初めて学術報告されました。 現在、本研究ではこれまでの成果を基に、特にcDNAライブラリを利用して、統合失調症と関連する新規の抗体を発見することを目指しています。新規抗体を発見することができれば、統合失調症の病態理解を深め、新たな治療法の開発につながる可能性があります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被験者リクルートが思うように進まず、血清が満足に集まらないため、進捗は当初見込んでいた状況より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、より多くの患者から血清を集め、また縦断的に症状評価および血清取得を行うことで、新規抗体の同定とその抗体の病的意義解明を行っていく。
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Causes of Carryover |
リクルートが遅れていることから本年度の使用金額が少額となってしまったが、来年以降は本来計上していたはずの金額を使用見込みである。
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