2023 Fiscal Year Research-status Report
計算論的モデルによるリスク選好評価を用いたうつ病・不安症・併存病態の神経機序解明
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23K14801
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
萩原 康輔 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10829518)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 計算論的モデル / リスク選好 / うつ / 不安 / 併存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、厳密な意思決定課題と計算論的アプローチを用いて、うつ病・不安症・うつ病と不安症の併存状態におけるリスク選好の異常をより精緻に評価し、その病態メカニズムを解明することを目的としている。 初年度では、うつ病・不安症におけるリスク選好の役割も含めた発症メカニズムを明らかにするため、健常者を対象とした研究を実施した。健常者52名をリクルートし、うつ症状・不安症状の評価を行い、リスク選好を評価する意思決定課題を実施した。また、リスク選好がうつ病・不安症を発症する予測因子になり得るか調査するため、現在、半年間の追跡を行っている最中である。患者に関しては、新たに2名の患者リクルートを行い、うつ症状・不安症状の評価ならびにリスク選好の評価を含む意思決定課題を実施した。現在までに、合計33名の患者をリクルートすることができている。また、うつ・不安の脳病態メカニズム解明の一環として、日常的因子の1つである自然画像の鑑賞がうつ病患者・不安症患者に与える影響を研究した。うつ病患者・不安症患者を各30名リクルートし、自然画像刺激と対照画像刺激(都市画像)を用いたクロスオーバー比較試験を実施した。画像刺激前後で気分評価を行い、また画像鑑賞中には近赤外線分光法(NIRS)にて前頭葉の脳血流変化を評価した。その結果、うつ病群・不安症群ともに自然画像による視覚刺激後に気分高揚効果が観察された一方で、脳血流変化についてはうつ病群のみで眼窩前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度が自然画像による視覚刺激後に有意に上昇し、うつ病と不安症の脳機能レベルでの異質性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、健常者および患者のリクルートを実施することができた。また、うつ病・不安症・併存状態の脳病態メカニズム解明の一環としてうつ病・不安症患者に対する自然画像刺激の研究も行うことができた。これらの研究実績から、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
リスク選好を評価する意思決定課題について、引き続き健常者と患者のリクルートを進め、解析を行う。 また、うつ病・不安症の脳機能レベルでの病態メカニズム評価に関する研究も継続して実施していく。
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Causes of Carryover |
当初計画では初年度から意思決定課題の実施やデータ解析に用いるパソコンを購入する予定であったが、意思決定課題に用いるアプリケーションの互換性に確認を要した他、機器のバージョンアップなどを考慮し、令和6年度の購入に変更した。また、参加予定だった学会が、日程の都合が合わず、不参加となった。初年度は健常者を中心としたリクルートを実施したため、謝金の残余が発生した。そのため、次年度使用額が生じた。当該使用額を令和6年度に意思決定課題用・データ解析用パソコンの購入、学会参加、リクルートした患者に対する謝金などに使用する予定である。
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