2023 Fiscal Year Research-status Report
高速撮像MRI画像の信号変化を利用した新たな筋機能検査法の確立
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23K14900
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
西村 瞬 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00964537)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | MRI / 嚥下機能評価 / 画像診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はMRIの撮像方法の一つであるT2強調画像(組織内の水を描出するのに適した撮像方法)をベースとした高速動画撮像(T2WI-HSCMRI)を用いて、新たな機能検査法を確立するものである。現在、T2WI-HSCMRIを用いて、嚥下(水の飲み込み)時の筋肉の動きや形態の評価を行うことに成功している。その研究の中で、機能している筋肉のMRI信号(画像の色調)が変化することを発見した。この結果から、筋肉一つ一つのレベルで嚥下機能を評価できる可能性があると考えた。この研究で将来、口腔癌患者の手術前後の嚥下時における各筋の信号変化を計測し、新たな機能評価ができる実用的な検査法の確立を目指している。本研究の目的はT2WI-HSCMRIを発展させ、口腔顎顔面領域における筋の新たな機能的評価方法の確立を目指すものである。この領域について、疾患を有する患者のどの筋がどの程度機能低下を起こすのかを定量的に評価する方法は、現在、画像検査の側面からは報告されていない。もしこの評価法が確立されれば、画像検査による筋単位での診断が可能となり、より的確なリハビリテーション法につながると考える。 今回の研究では、これまでのT2WI-HSCMRIシーケンスを再度調整し、筋の信号変化を定量評価するために最適なパラメータを模索することから始める。そして、咽頭部の筋の機能時の信号変化を再度確認し、その後、筋の機能と信号変化の相関性の検討を試みることとなっている。但し、嚥下に関与する咽頭筋の収縮は弱く、不随意筋であるため、preliminary studyとして咀嚼筋についての検討が必要であると考えた。具体的には咀嚼筋を対象に、咬合力と信号変化の相関性を検討する。その結果をもとに、嚥下時の咽頭筋の信号変化について検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者ボランティアの協力を得てコイルの選択や配置、TR/TEなどを検討し、信号変化が最も大きくなる最適な撮像条件を検討した。また、嚥下機能評価の撮影法を応用するため、画像の形成に優位であるとされている従来法で使用していた生理食塩水の量について再検討したほか、生理食塩水以外の試料についても検討した。 その後、嚥下時における咽頭筋の信号変化量の意義を検討するため、それに先立って咀嚼筋の収縮と信号変化の関係を検討することから始めた。具体的には、健常者ボランティアの協力を得て、デンタルプレスケールを用いて咬合力を測定し、咬合力と咀嚼筋の信号変化量の相関をみた。このデータを、後の咽頭収縮時の信号変化量と機能量を検討するための基礎データとして収集をおこなっている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
正常ボランティアの協力のもと、健常者の嚥下時の咽頭収縮筋や口蓋帆張筋などの信号変化を引き続き計測する予定である。また、同意が得られた口腔悪性腫瘍患者を対象に、周術期及び経過観察時のT2WI-HSCMRIの撮像を行い、信号変化の計測を行う。その際には、咀嚼筋によるpreliminary studyから得られた筋収縮力と信号変化量の関係を参考に、咽頭筋の機能を検討する。また、従来行ってきた検査術後の嚥下検査(VFやVEなど)との結果を照らし合わせて総合的に判断する基準を策定する。 得られた情報(画像データ、咬合力測定値、各種個人データ)との相関を詳細に調べるための統計解析を、AI(人工知能)を活用して行う予定である。個人での筋機能の評価を画像から予測できるようなアルゴリズムを生成し、将来的には病気の程度や手術の時間経過などによる筋機能の変化を予測できるような手法を確立することも視野に入れている。
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Causes of Carryover |
メディア購入費、情報発信経費として誤差が生じた。研究計画の通り、情報処理のためのソフト、デバイスの購入費として使用予定である。また、研究成果は国内外の学会発表及び専門誌への投稿を通して報告し、その成果を知らせる。そのための発表経費、論文投稿及び印刷費にあてる。
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