2023 Fiscal Year Research-status Report
STAT1機能獲得症の根源的な分子メカニズムの解明
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23K14951
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂田 園子 広島大学, 病院(医), 寄附講座助教 (50897907)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | STAT1機能獲得型変異(STAT1-GOF) / CMC / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
『STAT1変異が、その機能亢進を引き起こす分子メカニズムの解明』を目的とし、STAT1機能獲得型変異(STAT1-GOF)の発症分子基盤の解明に挑戦している。 【脱リン酸化酵素(TCPTP, PTP1B)によるSTAT1脱リン酸化の検証】 STAT1を欠損したU3A細胞に、野生型ないしは変異型STAT1と脱リン酸化酵素(TCPTP, PTP1B)とを一過性強制発現させ、IFN-γ刺激後のSTAT1リン酸化をimmunoblotで評価した。STAT1変異体として、複数のドメインのGOF変異を選択して検証を行った。STAT1を脱リン酸化することができないSHP2を、脱リン酸化酵素のコントロールとして利用した。一連の実験により、GOF変異体が脱リン酸化酵素に対して抵抗性を示す、という検証結果を得た。 【細胞内におけるリン酸化STAT1の比率の検討】 Phos-tag技術(リン酸化タンパクと非リン酸化タンパクとの分離を可能にする技術)を用いて、リン酸化STAT1比率(リン酸化STAT1/非リン酸化STAT1)を調査した。健常者、STAT1-GOF患者の末梢血からCD14陽性単球を分離し、それらをIFN-γで刺激した。刺激後にPhos-tag用の特殊溶液で溶解し、アクリルアミド結合型Phos-tagを含むSDS-PAGEで電気泳動することで、リン酸化STAT1と非リン酸化STAT1を分離した。分離したリン酸化STAT1、非リン酸化STAT1バンドをimmunoblotで検出し、デンシドメトリーを用いた定量化によりリン酸化STAT1比率を測定した。これまでの検証では、リン酸化STAT1比率が増加することを示す結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り実験は順調に進んでおり、GOF変異体が脱リン酸化酵素に対して抵抗性を示すという検証結果、およびリン酸化STAT1比率が増加することを示す結果を得ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
『STAT1変異が、その機能亢進を引き起こす分子メカニズムの解明』のため、以下の研究を進める。 【STAT1二量体形成能の評価】 STAT1は二量体を形成し、活性化状態によりparallel dimer(活性化型)とantiparallel dimer(非活性化型)の2つの形態をとる。脱リン酸化のプロセスで、parallel dimerからantiparallel dimerへと形態変化し、リン酸化されたTyr701残基への脱リン酸化酵素のアクセスが容易となる。STAT1-GOFでは、antiparallel dimerへの形態変化が妨げられ脱リン酸化障害に至ると推定している。STAT1 dimerの形成能を評価するため、以下の実験を行う。U3A細胞に、FLAG-tagged STAT1とV5-tagged STAT1とを一過性強制発現させる。次に、anti-FLAG抗体を用いて共免疫沈降を行い、anti-V5抗体により検出する。IFN-γ刺激条件でparallel dimerの、無刺激下でantiparallel dimerの形成状態を観察する。STAT1 dimerの形成状態を、野生型、変異型STAT1で比較検討し、変異型STAT1でantiparallel dimerの形成障害が存在するか調査する。 【STAT1-GOF変異タンパクの安定性の検証】 FLAG-tagged STAT1(野生型ないしは変異型)をマウス胎児線維芽細胞(MEF)に強制発現させた後、シクロヘキシミド処理を行う。タンパク合成を阻害するシクロヘキシミド処理を行うことで、STAT1タンパクの分解過程を観察する。サンプリング後に、anti-FLAG抗体を用いた免疫沈降によりSTAT1タンパクを評価する。一連の検討で、STAT1タンパクの分解過程を観察し、GOF変異体のタンパク安定性を検討する。
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Causes of Carryover |
研究は概ね計画通り順調に進んでいるが、データ検証のため実験の反復を行ったり、患者検体を用いた実験については症例数を増やして研究を重ねていくために、費用が必要となることが見込まれるため、予算の一部を繰り越した。そのため次年度使用額が生じた。 次年度以降、上記の通り、データ検証や症例数を増やした検討を進めていくことを計画している。
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