2023 Fiscal Year Research-status Report
グリア瘢痕における細胞老化を標的とした新生児低酸素性虚血性脳症の予後改善治療
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23K14984
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鳥内 皐暉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (70965946)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 新生児脳傷害 / グリア瘢痕 / 脳内炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)は脳性麻痺の原因の約10%を占め、長期的な神経障害を改善する治療法の確立が待ち望まれている。低酸素虚血に反応して損傷部位周辺に形成されるグリア瘢痕はダメージが無秩序に拡大することを防ぐ側面を持つ。一方で、グリア瘢痕自身による炎症や神経修復の阻害などの神経障害的な側面が問題となっている。申請者は、瘢痕形成過程におけるストレス条件下でのグリア増殖が早期細胞老化の誘導条件に類似していることに着目した。本研究では、グリア瘢痕の神経障害的な性質の原因を細胞老化に着目して解明する。さらに、老化細胞の除去あるいは機能改善が神経予後を向上させる効果を持つかどうかを検証し、HIEの長期予後を改善する新しい治療法の提案につなげたい。 HIEモデルラットを用いて、グリア瘢痕の細胞老化解析を行った。HIEモデルラットは生後7日齢ラットの左総頚動脈を結紮したのちに8%酸素条件下で1時間飼育することで作成した。老化細胞マーカー染色により、老化グリアの出現が確認できた。また、炎症性サイトカインを含むタンパク質群を分泌する現象であるsenescence-associated secretory phenotype(SASP)も確認でき、老化細胞の特徴を確認した。また、特定の時期に老化細胞除去薬を投与することでグリア瘢痕における炎症反応が緩和され、神経障害が改善された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったHIEモデルラットにおける老化グリアの出現を経時的に確認することができており、老化細胞除去薬による治療効果も確認がとれつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
グリア瘢痕形成細胞の細胞老化に関わるシグナルについてin vitroの実験系も駆使して検討する。HIEモデルラットに対する細胞老化除去薬の投与の効果に時期特異性があることを念頭に、治療効果の評価をタイムコースをとって行う。
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Causes of Carryover |
研究の進行に伴い実験計画を変更し前年度前倒し申請を行ったが、スムーズに研究が進行したため試薬購入が想定よりも少なくなり次年度使用額が生じた。次年度使用額は実験計画に基づき、購入が増加すると見込まれる実験動物と試薬の購入にあてる。
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