2023 Fiscal Year Research-status Report
Hepatitis delta virusを利用した肝臓への新規遺伝子導入技術の開発
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23K15008
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
千田 剛士 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (90961631)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | HDV / 遺伝子導入 / 肝細胞癌治療 / 遺伝子発現制御 / HBs抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
D型肝炎ウイルス(HDV)はRNAゲノムをもつウイルスであり、ヒトの肝細胞に感染すると細胞内で持続的にウイルスRNAが複製される。本研究はHDVが細胞内で複製する際に、肝細胞内のヒトの遺伝子を調節する働きをもつように改変することで、ウイルス感染後に特定の疾患に対する治療効果を発揮させ、治療に応用することが目的である。 目的を達成するため、ヒトの遺伝子を制御するsmall interfering RNA(siRNA)を数種類設計して、HDVゲノムの特定の部位に組み込んだ。作成した改変HDVゲノム、および改変前のHDVゲノムのそれぞれを肝癌細胞株に導入し、細胞内で発現させた。 HDVゲノムの発現後14日が経過した時点で細胞内RNAを回収してHDVゲノムの複製能を調べた。改変前のHDVゲノムを発現させた場合と比較して、ヒト遺伝子を調節する働きを持った改変HDVゲノムを発現させた場合は、細胞内ウイルスの量(コピー数)は抑制されていたものの、ウイルスの複製そのものは持続していた。 次に遺伝子調節のターゲットとなる遺伝子の量的変化について調べた。改変前のHDVゲノムを発現させた場合と比較して、ヒト遺伝子を調節する働きを持った改変HDVゲノムを発現させた場合は、ターゲットとなる遺伝子の発現量が抑制されていた。この抑制効果は遺伝子を細胞に導入後3日の時点ですでに起こっており、少なくとも14日間持続することが実験結果から示された。 またsiRNAの構造を変更して細胞内で切断されにくいように改変したところ、この改変HDVゲノムを発現させた場合の細胞内ターゲット遺伝子の抑制効果は減弱したが、ウイルスの複製効率は増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDVゲノムの改変方法については数種類のsiRNAの挿入を試すことができ、細胞内のウイルス複製の状態(ウイルスコピー数)とターゲットとなるヒト遺伝子の発現を評価するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
HDVゲノムへ挿入するsiRNAの構造をさらに試行錯誤して、HDVゲノムの複製効率が維持され、かつターゲットとなるヒト遺伝子を効率よく抑制する改変方法を探索する必要がある。また細胞内における改変HDVゲノム発現から3日後の時点ですでにターゲットとなるヒト遺伝子の抑制効果が現れており、ウイルスの粒子が形成される前にHDVゲノムが切断されてしまっている可能性が考えられた。この現象に対する対処方法も探索する必要がある。 また研究計画に従い次年度はB型肝炎ウイルスの抗原(HBs抗原)に対する改変を試みて、HDVの感染性粒子を作成したい。
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Causes of Carryover |
試薬販売メーカーのキャンペーン価格で物品を購入することを心掛け、節約できたため次年度に繰り越すことができた。次年度の物品費と合算して必要物品の購入に充てたい。
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