2023 Fiscal Year Research-status Report
NASHを増悪させる肥満者特有の腸内細菌と細菌遺伝子の同定
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23K15036
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 智之 金沢大学, 医学系, 助教 (30782065)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究背景と目的:肥満とその関連疾患における腸内細菌叢の役割は、近年多くの研究で注目されています。特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行に対する腸内細菌の影響が指摘されています。本研究の目的は、肥満患者における腸内細菌叢の変化を治療前後で比較し、その変化がNASHの肝線維化や炎症にどのように影響するかを明らかにすることです。 研究方法:肥満患者を対象に、治療前後の便サンプルを収集し、腸内細菌叢を解析しました。16S rRNAシーケンシングを用いて、各サンプル中の微生物の種類とその相対的な豊富さを評価しました。また、健常者15名からも便サンプルを収集し、肥満患者との比較を行いました。 研究結果1 Escherichia coli (E. coli) の変化:肥満治療前のサンプルにおいて、E. coli の存在が顕著に多いことが確認されました。治療後には全例でE. coli が明らかに減少し、この変化は統計的に有意でした。この結果は、肥満治療が腸内のE. coli の過剰な増殖を抑制する効果を持つことを示しています。 研究結果2 NASHにおける腸内細菌叢の影響:肥満者の持つ病的な腸内細菌がNASHの肝線維化や炎症を増悪させていることが推測されます。治療後の腸内細菌叢の改善により、肝臓の炎症マーカーの減少が観察されました。これにより、腸内細菌叢の調整がNASHの進行抑制に寄与する可能性が示唆されました。 研究結果3 健常者との比較: 健常者の腸内細菌叢と比較した結果、肥満患者の腸内には炎症を引き起こす可能性のある細菌が多く存在し、一方で健常者の腸内には炎症を抑える細菌が豊富であることが明らかになりました。これにより、肥満患者の腸内細菌叢が病的なプロファイルを持つことが確認されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肥満患者の便が、シーケンシングできないものが多く、新規にリクルートが必要であった。 また、健常者の便のリクルートも必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、すぐに肥満者の便のリクルートを継続し、E. coliの株を入手したうえで、全ゲノムシーケンシングで遺伝子配列を決定する。 これらの研究を通じ、肥満者の便中E. coliの遺伝子配列を決定し、肝線維化を起こしうる病原性遺伝子候補を抽出する。またE. coliはセロタイプにより病原性が異なることが知られているので、セロタイプも同定する。 それができれば炎症、脂肪肝、肥満を増悪させるE. coli株を同定、マウスモデルで確認し、Validation cohortにおけるE. coliの関与の確認を行う。
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Causes of Carryover |
試験がややすこし遅れており、必要な物品が少なかった。
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