2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K15039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井口 恵里子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD) (60975027)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Regnase-1 / 大腸癌 / IL-17 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA分解酵素Regnase-1(Reg1)は、免疫細胞でIL-6など炎症性サイトカインのmRNAを分解して免疫反応を制御することが知られている。我々は、ヒト腸管上皮、特に大腸腫瘍で免疫細胞と同等レベルのReg1の発現を確認しため、大腸腫瘍においてReg1が重要な役割を担っているのではないかと仮説を立て、その役割を解明するために本研究を行っている。 Apc遺伝子変異により消化管に腫瘍を発生するモデルであるApcMinマウスに、腸管上皮特異的Reg1ノックアウト(KO)を加えると、大腸腫瘍の有意な増大を認めた。大腸腫瘍におけるトランスクリプトーム解析から、Reg1の既知の分解標的のうちReg1 KOにより有意に発現上昇したのはNfkbiz遺伝子のみであった。Nfkbizは大腸癌の増大に関与するIL-17 signalingのmediatorで、Reg1 KOによりIL-17 signaling関連遺伝子群の発現上昇を認めたことから、Reg1は腸管上皮でNfkbiz mRNAの分解を促進しIL-17 signalingを制御し、大腸腫瘍の発育を抑制していると考えられた。 Reg1タンパクを増強する薬剤Dimethyl fumarate(DMF)を経口投与すると、Reg1 WT ApcMin大腸腫瘍は有意に縮小したが、Reg1 KO ApcMin大腸腫瘍の縮小は認めなかったことから、DMFはReg1を介した大腸腫瘍増大抑制効果があるものと考えられた。 これまでの結果より、Reg1は大腸腫瘍の新規治療標的となる可能性が示されたため、今後の臨床応用を視野に入れてさらなる研究を行っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に記載の通り、Reg1欠失によりマウスの大腸腫瘍に生じる表現型の変化、またその原因となる分解標的mRNAの同定、Reg1を標的とした大腸腫瘍治療の可能性までを動物実験・細胞実験により示すことができた。これらの結果をまとめ、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
論文投稿先の査読者より求められているrevise実験を現在行っているところであるが、今後は大腸のみに限らず、さらに他臓器においてもReg1の担う役割を解明することを目標とし、動物モデルを作成中である。Reg1の有無による表現型の変化を観察し、また動物モデルより抽出した核酸を用いたトランスクリプトーム解析を行って、各臓器におけるReg1の主要な分解標的を同定し、表現型の説明を行いたい。最終的には、Reg1を標的とした疾患治療の方策を探索する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度では、いったん論文投稿を行う準備を行っている時期があり、実験量が想定より少なくなったため、使用した物品が想定より少ない結果となった。次年度は、さらに他臓器におけるReg1の役割も視野にいれて探索を行うため、動物実験を多く施行する予定であり、各種物品の購入に次年度使用額をあてたい。
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