2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K15055
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 玲奈 (佐々木玲奈) 日本大学, 医学部, 研究医員 (10870644)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | microRNA / ウイルス性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、肝特異的マイクロRNAのPCRアレイを使用し、ウイルス性急性肝炎(非急性肝不全型)とウイルス性急性肝不全患者の血清を比較することで、9つのマイクロRNA(hsa-let-7g-5p, hsa-miR-126-3p, hsa-miR-16-5p, hsa-miR-21-5p, hsa-miR-223-3p, hsa-miR-23a-3p, hsa-miR-30c-5p, hsa-miR-4516, hsa-miR-451a)を見出した。validationを行うために、他施設共同研究とし(各施設の倫理委員会承認済み)、ウイルス性急性肝炎(非急性肝不全型)とウイルス性急性肝不全患者の血清を集めた。それらの血清よりマイクロRNAを抽出し、9つのマイクロRNAについて、RT-qPCRで定量比較を行っている。また、本研究は、validationされたマイクロRNAが肝細胞や周囲の細胞に与える影響を検討することで、肝炎の重症化にどのように寄与しているのかを明らかにするものであるが、in vitroでのウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルを確立しそれらマイクロRNAの発現量の変化を比較することで、マイクロRNAが肝臓に与える影響を予測できる。また、ウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルにマイクロRNAの過剰発現やノックダウンを行うことで、実臨床での肝炎重症化機序に近い検討を行える可能性がある。そのために、肝炎ウイルスを複数の肝癌細胞株に感染させたモデルを作成し、オレイン酸とパルミチン酸を配合したFree Fatty Asid(FFA)を濃度や時間を変えて肝癌細胞株に添加することで、in vitroでのウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルを確立した。これらの肝癌細胞株は、ウイルス量を real-time RT-PCRで確認した。また、肝癌細胞内の脂肪の蓄積をOil Red O染色で検討した。さらに、interleukin-6など炎症反応に関与するサイトカイン遺伝子の発現を real-time RT-PCRやELISAで確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本大学医学部の感染ゲノム研究室の空調の故障(研究室が陽圧となり外に漏れていた)があり、2023年4月から2023年5月下旬ごろまでウイルス感染細胞を使用した実験やウイルス感染患者の血清を使用する研究が出来なかった。また、2024年4月より研究室が日本大学医学部(東京都板橋区)より新潟大学医学部(新潟県中央区)に完全移転したため、2024年2月中旬よりウイルス感染細胞を使用した実験やウイルス感染患者の血清を使用する研究が出来なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、validationされたマイクロRNAが肝細胞に与える影響を検討する。ヒト肝癌細胞株Huh7細胞に、validationされた急性肝不全関連マイクロRNAをそれぞれ細胞内遺伝子導入し、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現(microRNA mimic)した肝癌細胞株を作成する。肝細胞障害性をMTS assayで検討する。また、肝細胞アポトーシスをcaspase-3と -7をELISAキットで検討する。肝細胞サイトカイン産生は、tumor necrosis factor-α、interleukin-6など炎症反応に関与するサイトカイン遺伝子の発現を real-time RT-PCRで確認する。コントロールにはcontrolマイクロRNA(microRNA mimic control)を同様に細胞内遺伝子導入したHuh7細胞を使用する。またマイクロRNA Hairpin Inhibitorを同様に細胞内遺伝子導入し、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性にノックダウンした肝癌細胞株を作成、同様の検討を行う。ヒト肝癌細胞株はHuh7以外にも、HepG2、Hep3B、HLF等を使用し、同様の検討を行う。次に、これらの肝癌細胞に対しプロテオミクス解析を行いカギとなるタンパク質を見出す。急性肝不全関連マイクロRNAの標的についてはTargetScanHumanを用いたin silico解析も行う。 さらに、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現またはノックダウンした肝癌細胞株の上清を、肝星細胞やマクロファージに添加し、肝星細胞やマクロファージのサイトカイン遺伝子発現や細胞毒性を同様に検討することで、急性肝不全関連マイクロRNAの肝細胞障害応答における機能的な役割を検討する。
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Causes of Carryover |
日本大学医学部の感染ゲノム研究室の空調の故障や研究室の移動のため実験可能な期間が限られてしまい、実験が予定道りに進められなかったため次年度使用額が生じた。新たな研究室に移り研究環境が整ったため、患者血清を使用した急性肝不全関連マイクロRNAのValidationを行い、有意な変化を示した急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現(microRNA mimic)、またはマイクロRNA阻害剤(マイクロRNA Hairpin Inhibitor)で一過性にノックダウンした肝癌細胞株を作成し、肝細胞障害性をMTS assay、肝細胞アポトーシスをcaspase-3と -7のELISAキットで確認する。 また、マイクロRNAをノックダウンまた過剰発現させた細胞株を用いてプロテオミクス解析を行い、肝細胞内シグナル伝達経路の変化を網羅的に観察し、肝炎重症化のカギとなるタンパク質を見出す。 さらに、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現またはノックダウンした肝癌細胞株の上清を、肝星細胞やマクロファージに添加し、肝星細胞やマクロファージの細胞毒性(MTSアッセイ)やサイトカイン遺伝子発現を検討することで、急性肝不全関連マイクロRNAの肝細胞障害応答における機能的な役割を検討する。 そのため、microRNA mimicやマイクロRNA阻害剤、MTS試薬の購入や、プロテオミクス解析の外注を行う。
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