2023 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現制御から検討する拡張型心筋症の病因解明と新規治療法の確立
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23K15166
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
柴田 敦 大阪公立大学, 大学院医学研究科循環器内科学, 病院講師 (60722668)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | コホート研究 / 心筋組織凍結保存 / 逆リモデリング / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特定疾患の一つである拡張型心筋症の病態の解明を目指すべく、“環境要因・後天性要因によるmicroRNA(miRNA)の発現の変化が、拡張型心筋症患者の心筋リモデリングに関与する” という仮説を立てた。そして仮説を検証すべく、拡張型心筋症患者の心筋生検サンプルの組織所見と心筋組織中のmiRNA発現との関連、miRNA発現と臨床アウトカムとの関連を解析することを計画した。 その中で、まず初年度の令和5年度に、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備した。このコホート研究では画像による体組成の評価、血液サンプルの凍結保存、心筋生検時の心筋残余組織の凍結保存も含んでいる。このコホート研究から、男性非虚血性心筋症患者の運動耐容能改善に貧血が寄与すること(Heart Vessels. 2024;39:412-426.)を見出した。 コホート研究から最終診断が拡張型心筋症であった患者を抽出し、6か月後の評価で心機能改善が得られた症例と得られなかった症例に分け、心筋組織中のmiRNAの評価を行った。18名(心機能改善群9名、心機能非改善群9名)で心筋組織中のmiRNAを抽出し、発現プロファイルを網羅的に検討した。結果、miR-18a-5pおよびmiR-198など複数のmiRNAが2群間で有意な発現量の差を認めた。この2群間で有意な発現量の差を認めたmiRNAに関しては、病理組織所見との関連を評価したところ複数のmiRNAが心筋細胞の大小不同や間質面積と有意な相関を認めた。特にmiRNA-3936は間質面積と強い相関を示すことを見出した(2024年日本循環器学会で発表)。 引き続きmiRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進め、心機能改善のメカニズムの解明を目指す方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、令和5~7年度の課題として、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を継続実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備することを掲げた。こちらに関しては、計画通り進めることが出来ており、本コホート研究から一定の成果も報告することが出来ている。 また、令和5~6年度の課題として、心筋生検組織を用いたmiRNA解析と組織所見・臨床経過との関連の検討を掲げた。上記コホート研究に登録された患者から、最終診断が拡張型心筋症であった患者18名を抽出し心筋組織中のmiRNAの検討を行った。結果、心機能の改善の有無でmiRNAの発現プロファイルの差を認めた。更に、心機能の改善の有無で有意な発現量の差を認めたmiRNAに関しては、病理組織所見との関連を評価したところ複数のmiRNAが心筋細胞の大小不同や間質面積と有意な相関を認めることを見出した。 引き続き心筋組織所見との関連の評価を行い、更にmiRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進めていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に報告した通り、心機能の改善の有無で分けた2群間で有意な発現量の差を認め、病理組織所見との相関も認められたmiRNAに関して更なる検討を進める予定である。miRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進め、心機能改善のメカニズムの解明を目指す。 また、当初の方針通り、血液サンプルを用いたmiRNA解析にも着手する。患者血清よりエクソソーム画分を抽出・精製し、エクソソームに含まれるmiRNAを、キットを用いて抽出する。このmiRNAの発現を、先の心筋組織から得られたmiRNAの結果と照らし合わせて検証することで、血中のmiRNAが拡張型心筋症患者の臨床的バイオマーカーとなりうるか検討する。 更に、候補miRNAに関しては、拡張型心筋症モデルマウスを用いてmiRNA制御による治療の可能性を検証する。心筋リモデリングを抑制し、臨床転帰を改善させる候補miRNAに関しては模倣核酸(mimic)の作成を検討する。また、心筋リモデリングを進展し、臨床転帰を悪化させる候補miRNAに関しては、miRNAとmRNAの結合をantimiRとよばれるmiRNAと相補的な塩基配列を有するアンチセンス核酸で阻害することで検証を行うことを検討する。
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Causes of Carryover |
令和5年度に心筋組織から抽出された候補miRNAに関して、血中での発現も評価する予定であった。血中のmiRNAは単独では極めて不安定のため、エクソソームに包まれ組織から分 泌されていることが知られている。そこで、ExoQuick(System Bioscience) を用いて患者血清よりエクソソーム画分を抽出・精製する。エクソソームに含まれるmiRNAを、キット (Isogen II) を用いて抽出する。抽出したmiRNAの発現プロファイルをmiRNA PCR arrayにて 網羅的に検討する。この計画に要する予算を計上していたが、令和5年度に施行することが出来ず、令和6年度に行うことを計画している。そのため、予算を令和6年度に移行させる。
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