2023 Fiscal Year Research-status Report
悪性胸膜中皮腫におけるDNA修復機構阻害薬がもたらすがん免疫賦活化作用の解明
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23K15190
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
谷口 寛和 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30824669)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / DNA修復機構阻害剤 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、悪性胸膜中皮腫に対する新規治療法としてDNA修復機構阻害剤の可能性について探索した。特に現時点ではCHK1阻害剤の着目し、悪性胸膜中皮腫にもたらす直接的な抗腫瘍効果、他の殺細胞性抗がん剤との併用効果、がん免疫微小環境に与える影響、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果について広く探索した。ヒト悪性胸膜中皮腫に対するDNA修復機構阻害剤の効果を検討するため、MTT assayにて各薬剤の単剤での細胞増殖効果を確認した。その結果、CHK1阻害剤であるPrexasertibは、悪性胸膜中皮腫に対するKey drugであるCisplatinよりも低濃度で強い細胞増殖抑制効果を発揮していることを発見した)。これらの薬剤のうち、CHK1阻害剤に着目して更に実験を進めた。アポトーシスassayでは、Prexasertibは濃度依存性にApoptosisを誘導しており、直接的な抗腫瘍効果を有することがin vitroで証明された。マウス皮下腫瘍モデルを用いた検討でも、Prexasertibは皮下腫瘍の増大を抑制することを示した。更に、悪性胸膜中皮腫に対してPrexasertibががん免疫賦活を発揮するかを検討した。悪性胸膜中皮腫細胞株において、Prexasertib曝露後にDAPIを用いて細胞染色を行ったところ、Micronucleiと呼ばれる小型の核が分裂しており、不均一な細胞分裂が誘導されていることが確認された。Western blotting法を用いたシグナル解析では、STING、TBK1、IRF3のタンパクのリン酸化が亢進しており、STING経路の活性化が惹起されていた。また、PD-L1の発現も上昇していた。リアルタイムPCR法を用いたType 1 インターフェロン、CXCL10、CCL5のmRNA発現はPrexasertibによって上昇していることが検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していたin vitroの実験を概ね進めることが出来た。加えて、in vivoの実験にも取り掛かれており、予想されていた計画に概ね沿って研究を進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果に関する検討をマウスモデルを用いて更に行う予定である。マウスモデルにおいては、皮下腫瘍モデルは個体による腫瘍増殖の差が大きいことが判明したため、胸膜播種モデルを作成し、治療効果を検討していく予定である。また、免疫賦活化作用の検討のため、マウスから腫瘍を摘出した際にFlowcytemetry法、IHC法を用いてT細胞をはじめとした免疫細胞の腫瘍内への浸潤の程度を確認する。 また、CHK1阻害剤による影響を更に詳細に検討するため、RNAシークエンスを予定している。
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Causes of Carryover |
実験試薬などを該当年度の物品費として計上していたが、順調に実験が進んだため予想よりも試薬が少なくて済んだ。翌年度は、in vitroの実験に加え、マウスモデルを用いた治療実験や、RNAシークエンス、論文発表を予定している。
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