2023 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスの高頻度変異導入バリアントを利用した薬剤耐性化機構の解明
Project/Area Number |
23K15200
|
Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
森 幸太郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, メディカルゲノムセンター・ゲノム医療研究推進室長 (10773822)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | Viral polymerase / Fidelity variant / Quasispecies |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスでは、ゲノム複製時にウイルスポリメラーゼによって高頻度に変異が導入されるため、感染細胞中の子孫ウイルスは遺伝的に不均一な「Quasispecies」と呼ばれる集団を形成している。ウイルス集団の多様化は、抗ウイルス薬に対する耐性能の獲得やワクチン接種による宿主免疫からの逃避など、環境の変化の際に新しい環境へ速やかに適応・馴化することに貢献する一方で、変異頻度が高すぎる場合は致死的変異を持つウイルスが増えすぎて感染性のあるウイルスの増殖までもが阻害され、やがてウイルス集団の消滅につながることから、ウイルスにとっては諸刃の剣である。従って、ウイルスは増殖条件が良い環境下では変異頻度を低く抑える一方で、抗ウイルス薬や宿主の免疫機構など、ウイルス増殖を阻害する選択圧が生じた状況では、一過的にウイルス変異の出現頻度を上げ多様なウイルスを生み出して集団の多様化をはかるという、適切な制御を行うことで新しい環境に柔軟に適応して生き残りを図っている可能性が考えられる。RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼには、野生型と比較して変異を生じやす変異体が存在することが知られている。本研究では、インフルエンザウイルスにおいてそのような高頻度変異導入の傾向を示す変異体を単離するとともに、ウイルスにとって増殖に不都合な環境を作り出し、ウイルスがそのような不都合な環境を打破する変異を新規に獲得するか、そうであった場合に高頻度変異導入の傾向を示す変異体がそのトリガーになりうるかの実証を試みる。培養細胞にウイルスゲノム複製に必要なレプリコンを発現させ、ポリメラーゼインヒビターの抵抗性の獲得を観察した。抵抗性獲得までのタイムコース中でウイルスポリメラーゼの高頻度変異導入変異体の発現量が変化していることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウイルスポリメラーゼの薬剤抵抗性獲得実験の条件設定が難航し、ウイルスポリメラーゼの高頻度変異導入変異体の発現量の変化を捉える実験が終了できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
高頻度変異導入変異体の発現量の変化を観察する。加えて、感染実験系を構築して本年度のポリメラーゼのみ発現させた薬剤抵抗性獲得実験の結果と比較し、高頻度変異導入変異体の発現量の変化にポリメラーゼ以外のウイルス因子が関与するかを明らかにする。薬剤抵抗性を獲得するまでのタイムコースにおいてポリメラーゼの高頻度変異導入変異体の発現量の変化に特徴が出るかどうかを観察するとともに、中和抗体からの逃避といった薬剤以外の刺激に関する抵抗性獲得でも同様の現象が見られるかを実証する。
|
Causes of Carryover |
本研究に必要な試薬で、かつ2,356円で購入可能なものがなかったため、次年度に繰り越し、本研究に必要な試薬を購入することを計画している。
|