2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞形質分化プログラムの破綻を機序とする小細胞肺がんの新規治療戦略の確立
Project/Area Number |
23K15205
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
井上 裕介 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (10795470)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 小細胞肺癌 / 形質制御転写因子 / 相互排他性 / 分化プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
小細胞肺癌は高悪性度の腫瘍であり、過去数十年間にわたって治療の大きな進歩がなく、いまだ予後は極めて不良である。しかし近年、形質制御転写因子(ASCL1、NEUROD1、POU2F3、YAP1、ATOH1)の発現プロファイルによる小細胞肺癌の分類が提唱され、これに基づく個別化医療の実現が期待されている。申請者は、これらの形質制御転写因子が小細胞肺癌で相互排他的に発現している可能性に注目し、この相互排他性の背景に腫瘍抑制性に働く転写因子の組み合わせが存在することにより選択や淘汰が生じていると仮説を立てた。申請者は、小細胞肺癌の臨床検体を解析し、小細胞肺癌におけるもっとも代表的な形質制御転写因子であるASCL1とNEUROD1の発現が個々の細胞レベルで高度に相互排他的であり、この両者の共発現が小細胞肺癌細胞株において細胞死を誘導することを見出した。また、網羅的遺伝子発現解析とATAC-seq解析を行い、ASCL1とNEUROD1の共発現によりゲノムワイドでのオープンクロマチンの変化が生じることで、本来の形質分化プログラムが破綻するため細胞死が生じることを明らかにした。本研究では、引き続きこのメカニズムに基づいた小細胞肺癌における新規の治療戦略の同定に挑む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の予定通りに研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が明らかにした「ASCL1とNEUROD1の共発現によるオープンクロマチンの変化を介した小細胞肺癌の細胞死メカニズム」を利用した治療戦略を実現すべく、さらなる分子メカニズムの解明に挑む。特に、治療標的となりうる分子の同定と治療薬の同定・創出を目指す。
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Causes of Carryover |
想定よりも物品費が少額であったが、次年度に使用予定である。
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