2023 Fiscal Year Research-status Report
Effect of corticosteroid on cellular interaction in lung microenvironment
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23K15218
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
滝口 寛人 東海大学, 医学部, 講師 (60710754)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肺胞マクロファージ / Ⅱ型肺胞上皮細胞 / 細胞間相互作用 / 共培養 / 嗅覚受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、炎症に関連する肺胞マクロファージとⅡ型肺胞上皮細胞間の相互作用を調べるため、Transwell insertを用いて、ラット肺胞マクロファージの細胞株であるNR8383とⅡ型肺胞上皮細胞(ATⅡ)の共培養実験(n=2)を行った。具体的には、DEX 1mMの存在、非存在下でNR8383を24時間培養後にATⅡと共培養を開始、LPS 100ng/mLで24時間刺激したのちに、マイクロアレイ(Agilent SurePrint G3 Rat GE Microarray )を用いてトランスクリプトーム解析を行った。 結果、Lipopolysaccharides(LPS)で刺激時、ATⅡと共培養を行ったNR8383では、単培養群と比較してIl1b、Cxcl1、Cxcl2、Cxcl3など、好中球や単球などの細胞遊走に関わるサイトカインの遺伝子発現が低下していた。これは、共培養によってNR8383がATⅡから抑制シグナルを受けていることが示唆される所見と考えた。 また、LPS刺激時に共培養においてのみ変動する3,263遺伝子(NR8383の単培養では変動しない)に注目し、エンリッチメント解析を行い、発現変動遺伝子群はOlfactory transductionと関連があること(FDR = 1.05e-8)、嗅覚受容体(Olr)遺伝子群は共培養においてLPS、Dexamethasone(DEX)に対する異なる発現変動パターンを示すことを見出した。Olr遺伝子は鼻腔上皮細胞のみならずマクロファージを始めとした免疫細胞上に幅広く発現することで肺胞腔内に侵入した細菌などの異物を感知し、マクロファージの遊走、貪食、活性化に関与するとされる。炎症抑制に関与するOlrも報告されており、Olr遺伝子群は炎症環境における細胞間相互作用に関わる遺伝子の候補と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の上半期は、ラットから採集した初代培養細胞を用いた共培養実験を行う予定であったが、ラット1匹から採集できるマクロファージが想定より少ないなど技術的な問題があり、健常ラットの肺胞マクロファージであるNR8383を用いて解析を行った。下半期は、当初の計画通り、ラット数を増やすことで共培養実験に十分は肺胞マクロファージを採集することに成功した。また、骨髄を抽出し、monocyte colony-stimulation factorを用いてマクロファージ(単球由来マクロファージモデル)を分化誘導することに成功しており、2024年度にかけてこれら初代培養細胞を用いたトランスクリプトーム解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に用いた細胞株NR8383は、組織レジデントマクロファージに近い存在であると考えられ、初代培養細胞の肺胞マクロファージ(AM)を用いた実験で同様の結果が得られるかどうか検証を行う。さらに、骨髄から分化誘導を行ったマクロファージ(BMDM)を用いた共培養実験において、AMと異なる変動遺伝子群を抽出する。BMDMは、単球由来マクロファージモデルであり、より病的肺の形成に関与していることが報告されている。もし、LPS、DEXに対しマクロファージの由来に依存して発現変動パターンが異なる遺伝子群を同定することができれば、それらは病的肺の形成に関連する遺伝子として有力な候補となる。また、上述のin vitroで得られた結果をin vivoのデータで検証する。当初は、組織培養を用いたシングルRNAシーケンシングによる解析を予定していたが、組織検体からのシングルセル解析が学内の設備では困難であることが判明し、シングルセル解析の外注、あるいは公共データベース(ヒト肺線維症、あるいはマウスBleomycinモデルなど)の活用による検証を予定している。
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Causes of Carryover |
2023年度は、学内の研究資金50万円が獲得でき、使用したため科研費の繰越金が発生した。2024年度は、共培養実験の物品購入、トランスクリプトーム解析費用、公共データベースの解析費用(Webツール、有償)に充てる予定である。
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