2023 Fiscal Year Research-status Report
New strategies for the initial treatment of severe skin and soft tissue infections using point-of-care testing (POCT).
Project/Area Number |
23K15266
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 千晶 名古屋大学, 医学系研究科, 客員研究者 (10846611)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重症皮膚軟部組織感染症 / 迅速診断 / MRSA / A群β溶連菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,重症皮膚軟部組織感染症に対し,臨床現場即時型検査を用いて起炎菌スクリーニングを迅速に行うことで,より適切な重症皮膚軟部組織感染症(Skin and soft tissue infections: SSTI)初期治療法の開発に直結する臨床的データを得ることを目的とする。本研究は「重症SSTIには一律に広域抗菌薬を用いた経験的治療(Empiric therapy)を開始し,培養結果に応じて起炎菌に合わせた狭域抗菌薬への変更(De-escalation)を経て標的治療(Definitive Therapy)を行う」という,一般的な感染症診療からのパラダイムシフトとなり得る研究であり,将来の感染症診療に広く貢献することを目指す。 本研究は以下の2点を目的とし,SSTIにおける,より適切な初期治療のための起炎菌迅速診断法と,臨床的な重症化リスクを検証する。 壊死性筋膜炎を含めた,重症SSTIでの起炎菌同定において,臨床現場即時型検査(Point of Care Testing: POCT)の培養検査に対する感度・特異度を明らかにする。 MRSAの毒素産生能など細菌側の遺伝的性質と,宿主側の皮膚バリア機能障害などの要因を解析し,重症化リスクを評価する。 本年度は、名古屋大学の生命倫理審査に申請し、臨床研究実施の許可を得た。また、PCR法を用いたMRSAの迅速診断に必要な試薬を調べ、入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は,適切な検体採取法と迅速診断法の手技を確立するため,重症SSTIのうち,まずは少数の症例において,迅速診断法を行う方針であった。遅延の理由としては、まず、倫理申請が承認されるまでに当初の想定よりも長期間を要したことが挙げられる。また、倫理申請承認後に名古屋大学医学部付属病院を受診する重症SSTI症例が少なく、解析の対象となる症例が得られなかったため、初年度にPilot studyを行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋大学医学部付属病院において、救急外来や皮膚科外来を受診したSSTI症例のうち、重症SSTIと診断した症例において,膿汁や浸出液を患部より採取する。採取した検体を少量,イムノクロマト法と迅速PCR検査用にとり,残りを培養検査に提出する。 ②エムラインStrepAでA群β溶連菌の有無を調べ,前処理を施行しGeneSoCで耐性菌スクリーニングを行う。③通常の培養検査の結果との起炎菌検出率の比較検討を行う。 患者の皮膚バリア破綻の指標としては,Transepidermal Water Loss(TEWL)を用いる。角層の脂質の構成を評価するためにはテープストリッピング法を用いる。皮膚バリア機能障害の遺伝的背景については患者DNAを用いて遺伝子解析を行う。本研究では,治療に関しては通常の保険診療を主治医の判断のもとに行い,治療介入は行わない観察研究として実施する。 2年目は,適切な検体採取法と迅速診断法の手技を確立するため,重症SSTIのうち,まずはPilot studyとして少数の症例において,迅速診断法を行う。Pilot studyの結果を踏まえて、症例数を増やし,迅速診断法と培養結果の比較検討を行う。また,症例による臨床像の違い(炎症の程度,抗生剤治療への反応性の差など)における,宿主側の重症化リスクを比較する。得られた結果をもとに,研究成果をまとめ,成果発表を行う。 研究が当初計画通りに進まない場合は,検体採取方法や前処理方法を検討することで,最適な起炎菌の迅速診断方法確立を試みる。
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Causes of Carryover |
初年度、解析対象となる症例が少なく、Pilot studyが予定通り進まなかったため、Pilot studyで使用予定だった研究費を次年度使用する方針となった。
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