2023 Fiscal Year Research-status Report
T細胞性急性リンパ性白血病におけるKLF4の機能解明および新規治療法の開発
Project/Area Number |
23K15298
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
能浦 三奈 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (90828401)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 急性リンパ性白血病 / 転写因子 / KLF4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)における転写因子KLF4の機能を明らかにし、KLF4誘導薬を用いた新規治療法を提唱することを目的としている。 T-ALLにおけるKLF4標的遺伝子の同定を目標とし、in silicoおよびin vitroの実験を行った。In silico解析の結果、T-ALLで高頻度に異常発現が認められるTAL1がKLF4標的遺伝子の候補の一つとして選定された。TAL1陽性T-ALL細胞株4種類(Jurkat, MOLT-3, CCRF-CEM, RPMI-8402)にKLF4を過剰発現させたところ、すべての細胞株において細胞増殖が有意に抑制された。TAL1陽性T-ALL細胞株においてKLF4がTAL1の発現を抑制するか定量PCRで調べたところ、TAL1スーパーエンハンサー変異を有するJurkatおよびMOLT-3においてはTAL1の発現が有意に抑制された。一方でSIL-TAL1融合遺伝子を有するCCRF-CEMおよびRPMI-8402においてはTAL1の発現に変化は認められなかった。これよりKLF4はTAL1スーパーエンハンサーによって異常制御されたTAL1の発現を抑制することが示唆された。次にKLF4がTAL1スーパーエンハンサーの形成に重要な転写因子MYBの発現を制御するか検討した。定量PCR、ChIP、ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施し、KLF4がMYBのプロモーターに結合し、MYBの転写を直接抑制することを明らかにした。さらにKLF4誘導薬であるAPTO-253がTAL1陽性T-ALL細胞株4種すべてにおいて著効することを確認した。TAL1の発現抑制が認められなかったCCRF-CEMおよびRPMI-8402におけるKLF4の抗腫瘍メカニズムについて現在検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度実施予定だった実験内容は概ね予定通りに終了し、次年度実施予定だったKLF4誘導薬を用いた実験も概ね完了している。これまでの研究内容について国内外の学会で発表することができており、当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
KLF4による細胞増殖抑制がMYBおよびTAL1の発現抑制によるものか調べるため、KLF4過剰発現T-ALL細胞株にさらにMYBおよびTAL1の過剰発現ベクターを導入し、細胞増殖抑制がレスキューされるか検討する。現在これらの発現ベクターを作製中である。 KLF4過剰発現によりTAL1抑制が認められなかったCCRF-CEMとRPMI-8402におけるKLF4の抗腫瘍メカニズムについて検討する。これらの細胞株においてもKLF4過剰発現によりMYBの発現が抑制されたこと、MYBはT-ALLで高発現しているがん遺伝子であることから、MYBの発現抑制が重要なのではないかと考える。その場合TAL1ではないMYBの別の標的遺伝子が増殖に寄与していると考えられる。これを明らかにするため、CCRF-CEMおよびRPMI-8402にMYBを標的とするshRNAを導入し、MYBノックダウンによるフェノタイプを調べると共にRNA-seqで標的遺伝子を同定する。
|
Causes of Carryover |
複数の細胞株を購入予定だったが、共同研究先の施設より譲渡して頂けることになったため購入の必要がなくなった。またベクターの作製や細胞への導入が順調に進んだため、使用する試薬類の量が想より少なく済んだ。次年度の使用計画としてはRNA-seq外注、消耗品費用、英文校正費、論文掲載料などに充てる予定である。学会参加費にも支出予定である。
|