2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the landscape of genetic alterations and their biological relevance in extranodal NK/T cell lymphoma, nasal type.
Project/Area Number |
23K15313
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
木暮 泰寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40782389)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ENKTCL / 遺伝子解析 / ドライバー遺伝子 / MSN |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(ENKL)の遺伝子異常の全体像を解明し、それに基づいた分子分類を構築することを目指している。これまでのENKLの遺伝子解析では、変異以外の異常(構造異常・融合遺伝子)が過小評価されており、真の全体像は明らかでなかった。本研究では、150例超の標的シーケンスを実施し、構造異常・融合遺伝子検出法を最適化することで、ENKLの遺伝子異常の全体像をより正確・詳細に解明する。また、これらの異常に基づいた分子分類を構築し、臨床的な有用性を検証するとともに、ENKLに特徴的なMSN異常に着目した機能解析を実施し、その生物学的意義を明らかにすることを目指す。 1年目には、主に以下の成果を挙げた。まず、ENKL症例を日本(64例)とフランス(114例)の合計178例を収集し、遺伝子解析を実施した。既報のENKLのドライバーとして知られているDDX3X、STAT3、BCOR、TP53、MSNに加え、新規ドライバー遺伝子としてHLA-B、HLA-C、ROBO1、CD58、POT1、MAP2K1を明らかにし、ENKLの遺伝子異常が多様であることを示した。また、X染色体上の遺伝子(MSN、BCOR、DDX3X、KDM6A)が病態に重要であり、男性優位を説明するのではないかと推測された。さらに、EBVゲノムにおいて新たにOriP領域にdeletionが集積していることを発見し、EBVの欠失がPD-L1異常と相関することも示された。 X染色体上のドライバー異常の中で、MSNに最も高頻度な遺伝子異常(15%)を認めたため、続いてNK/T細胞腫瘍由来の細胞株及びMSNノックアウトマウスを用いたMSNの機能解析を行った。MSNの機能喪失によりNK細胞の増殖亢進が明らかとなり、がん化における意義が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順調に進捗している。最初の1年間で、ENKL症例を収集し、遺伝子解析を実施した。これにより、多数の新規遺伝子異常を同定し、ENKLにおける遺伝子異常の全体像を明らかにした。既報のENKLのドライバーとして知られているDDX3X、STAT3、BCOR、TP53、MSNなどに加え、新規ドライバー遺伝子としてHLA-B、HLA-C、ROBO1、CD58、POT1、MAP2K1を明らかにし、ENKLの遺伝子異常が多様であることを示した。また、ENKLの遺伝子異常の特徴として、X染色体上に位置するドライバー異常(MSN、BCOR、DDX3X、KDM6A)が高頻度に認められ、女性ではX染色体の欠失を高頻度に伴うことから、ENKLの男性優位性を説明すると考えられた。これらの結果は、既存の知見に新たな視点を加えるものであり、ENKLの分子病態の解明に大きく貢献している。また、EBVゲノムにおいて新たにOriP領域にdeletionが集積していることを発見し、EBVのdeletionがPD-L1異常と相関することも示された。 MSN異常の機能解析においては、CRISPR技術を用いた細胞株モデルの作成に成功し、MSNの異常が細胞増殖を亢進することを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、遺伝子解析について、遺伝子異常のデータを用いて分子分類を作成し、予後予測や治療法選択の基盤となることを示す。また、MSNのノックアウトで分化障害が生じることを示したが、その他の生物学的な意義を追求する。具体的には、MSNとNK細胞の分化度や発現変化に着目し、発現変化の結果明らかになったパスウェイが阻害可能であるかを検討する。
さらに、血液腫瘍の融合遺伝子の同定に関して残された解析を実施予定である。主に、RNA-seqおよび標的RNA-seqによる融合遺伝子の検出アルゴリズムの評価と最適化に注力する。最終的には、ENKLや他のT/NK細胞リンパ腫の個別化医療の最適化に繋げることを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は他研究費で購入した物品を流用し、また他研究費で実施した解析データを利用することができたため、それらを活用して実験を実施した。このため、次年度使用額が生じることになった。 次年度の使用計画としては、ENKLのさらなる理解と治療法開発のために、機能解析とシークエンス解析を継続する。特に、薬剤投与を伴う実験には高いコストが必要と考えられるため、この部分を含めて資金を充てる。これらの解析は研究計画の大枠に沿っており、当初の目標に向けて計画通り進捗している。他研究費の活用により、効率的かつ高品質なデータを取得できたと考えている。
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Research Products
(1 results)