2023 Fiscal Year Research-status Report
生体イメージングで解く血球貪食症候群の異常貪食機構とその機能的役割
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23K15346
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤井 健太郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90908328)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血球貪食症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
血球貧食症候群は、骨髄などの網内系組織において炎症性サイトカインにより活性化されたマクロファージが増殖、自己の血球を貧食し、血球減少を引き起こす致命的な疾患であるが、血球貪食の実態については不明な点が多い。 最初に研究課題として、疾患特異的マクロファージによる血球貪食機構が、どのようなメカニズムによって起きているか解明することを挙げた。特に、生きた細胞を貪食するとされる現象を評価し、血球のアポトーシスに依存しないことを証明することを研究の主たる目的とした。この解析には時空間的解析が必要と考え、肝臓などの網内系組織のイントラバイタルイメージング系を用いて、貪食される直前の細胞の生死を評価することとした。 予備的な検討で、定常状態ではアポトーシスを誘導した血球はKupffer細胞などの常在性マクロファージに貪食されるが、アポトーシスしていない血球は貪食されないことを見いだしていた。初年度は、この系の確立に加えて、アポトーシスの有無を検出するSCAT3.1を用いてイントラバイタルイメージングを行い、定常状態では観察の出来なかった「マクロファージによる生きた血球の貪食」を観察し得た。また、これらの貪食マクロファージは、定常状態で存在するKupffer細胞などと同様に血管内に存在することを証明し得た。この貪食マクロファージは細胞数が多いのみならず、非常に大きな細胞であり、網内系血管壁を埋め尽くすかのように密に存在していた。 現在、この疾患特異的な血球貪食マクロファージをFACSで単離することに成功しており、この血球貪食マクロファージ特異的な遺伝子発現解析のための条件検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、最初の課題である血球貪食の観察と被貪食血球のアポトーシスの有無についての評価を生体イメージングを用いて行い、当初の仮説を証明することができた。 また、疾患特異的な血球貪食マクロファージのフローサイトメーターを用いた単離方法についても、安定して行うことが出来るようになった。 一方で、被貪食血球のmRNA情報を除いたRibo-Tag seqは回収細胞数の問題で現時点では行えておらず、核内遺伝子情報のみを評価するsingle nuclei RNAseqに方針を変更して条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体イメージングを用いた、一つ目の研究課題を解決しており、次に疾患特異的な貪食機構の解明を目指す。つまり、なぜ、どのようにして、このマクロファージが血球を貪食するようになるかという問いに対して、マクロファージのトランスクリプトーム解析を行い解析する。 しかし、貪食マクロファージを単純に単離してRNAseqを行うと、被貪食血球のmRNA情報が混入してしまうという問題があり、この点を解決する必要がある。 この解決のために検討を行っていた、Ribo-Tag seqは回収細胞数の問題で現時点では解析出来ておらず、単一の核内遺伝子情報のみを評価するsingle nuclei RNAseqに方針を変更して、この課題を解決する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、血球貪食症候群における血球貪食マクロファージの貪食機構の解析と疾患特異的マクロファージの全身炎症への寄与を主たる目的としている。 最初の課題である貪食機構の解析については、生体イメージングを用いた画像解析を中心に行ったが、二光子励起顕微鏡は研究室が所有する設備を用い、研究室で飼育したマウスで実験を行ったたため、染色試薬など消耗品の購入の他は研究費を節約することが可能であった。 一方で、本研究のもう一つの柱である疾患特異的マクロファージの全身炎症への寄与の評価については、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析が必要である。特に、現在予定している、単一の核内遺伝子情報のみを評価するsingle nuclei RNAseqは高額であるため、繰り越した本研究費を次年度交付分に加えて実施する予定である。
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