2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K15353
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
土田 奈緒美 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30847918)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己炎症性疾患 / 体細胞バリアント / 全エクソーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己炎症性疾患(autoinflammatory diseases, AID) は、周期性発熱・関節炎・皮膚炎などを主症状とし、あらゆる臓器に炎症を生じる希少難治病態の総称である。AIDは免疫にかかわる様々な分子の遺伝子バリアントに起因するが、近年、成人発症の自己炎症病態において、体細胞バリアントによって後天的に自己炎症性疾患を発症する症例が報告されつつある。本研究の目的は、成人発症の自己炎症性疾患において、低頻度体細胞バリアントを含めた網羅的かつ詳細な遺伝子解析を用いて疾患責任遺伝子バリアントの同定を行うことである。 (1)VEXAS症候群疑い症例のUBA1遺伝子バリアント解析 2020年に新たに報告された後天性の炎症症候群であるVEXAS症候群の責任遺伝子のUBA1遺伝子の既知バリアントを高感度に検出する系を確立した(サンガーシーケンス、デジタルドロプレットPCR、PNA-clamping PCR、ターゲットアンプリコンシーケンス)。自・他施設からVEXAS症候群が疑われる患者検体を集積し、UBA1遺伝子バリアント解析を行い、その精度と妥当性について検討した。また、UBA1遺伝子解析の必要性を判断するための簡便なスコアリングシステムの開発と検討を行った。これらの成果をまとめ、論文報告を行った。 (2)VEXAS症候群疑い症例のUBA1遺伝子バリアント陰性症例の解析 上述のUBA1遺伝子の既知バリアント解析で陰性であった症例に対して、その他の責任遺伝子バリアントの検出・同定を目的に、網羅的な遺伝子解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) VEXAS症候群が疑われた症例に対して、UBA1遺伝子バリアントを高感度に検出する系を確立し、解析手法の比較検討を行い、効率的にバリアントを検出するスクリーニング手順を検討した。また、UBA1遺伝子解析の必要性を判断するための簡便なスコアリングシステムの開発と検討を行った。これらの成果について、論文報告を行った。 (2) VEXAS症候群が疑われた症例のうち、上述のバリアントスクリーニングで陰性であった症例に対して、生殖細胞系列バリアントと体細胞バリアントの検出を目的に、通常の全エクソーム解析で用いられる読み取り深度よりも3倍の読み取り深度を目標に全エクソーム解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) VEXAS症候群におけるUBA1遺伝子解析の方法について、関連学会や検査会社に研究成果の情報提供を行い、今後の外注検査化への協力を進める。臨床スコアリングシステムの妥当性について検討を進める。 (2) シーケンスデータ解析を行い、責任遺伝子バリアントの検出・同定を進める。
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Causes of Carryover |
令和5年度に産前産後休業と育児休業を取得したため、休業中は研究解析を中断することになった。申請時には米国リウマチ学会に参加予定であったが、前述の休業の時期と重なり参加できず、参加費や旅費が不要となった。遺伝子解析に関して、シーケンスデータ解析と並行してバリアント検証を予定していたが、データ解析後に検証に移ることとしたため、現時点では検証に関する実験に見込んでいた消耗品予算使用には至らなかった。論文発表投稿料を見込んでいたが、学内の「国際学術誌への論文投稿料等支援制度」に応募し補助を受けることができたため、論文発表は行ったが使用に至らなかった。 令和6年度は、シーケンスデータから候補バリアントを検出し、これまで試みてきたサンガーシーケンス、PNA-clamping PCR、ディープシーケンス、デジタルPCRなどの解析系を用いて検証を進める予定である。
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