2023 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病におけるアルドラーゼBを介した新たなインスリン分泌障害機構の解明
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23K15406
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井上 亮太 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (40902763)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / アルドラーゼB / 膵β細胞 / インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病下の膵島で増加するミトコンドリア蛋白のUncoupling protein 2 (UCP2) により誘導されるアルドラーゼB (AldoB) に関して、糖尿病病態形成への寄与や新規治療への応用の可能性を検討している。マウスの単離膵島において、AldoBの発現は高血糖、高遊離脂肪酸および小胞体ストレスで増加し、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス、IRS2欠損マウス)の膵島における増加も確認された。AldoB floxedマウスを新規に樹立し、Ins1-creマウスと交配することにより膵β細胞特異的Aldob欠損マウス(βAldobKO)を作成した。膵島におけるAldoBのノックアウト効率はmRNAおよび蛋白発現共に90%程度であった。通常食下におけるβAldobKOマウスの体重および耐糖能は対照マウスと同等であった。単離膵島において、高グルコース下で24時間培養後のグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)はβAldobKOマウスで増加した。高脂肪食負荷において体重増加の程度に変化は無かったが、βAldobKOマウスでは対照マウスと比較し血糖値の悪化が抑制される傾向にあった。また、耐糖能異常を呈する膵β細胞特異的UCP2トランスジェニックマウス(βUCP2Tg)において、βAldobKOマウスとの交配によりAldoBを欠損させると、βUCP2Tgマウスのインスリン分泌障害が有意に回復した。単離膵島においても、βUCP2TgマウスのGSISの低下がAldoBの欠損により回復することを確認している。また、AldoB欠損は高血糖下もしくは小胞体ストレス下で培養した単離膵島の膵β細胞アポトーシスを抑制することを見出している。以上より、糖尿病下においてAldoBの欠損は膵β細胞機能を回復させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病状態にある膵β細胞において、AldoBの欠損がインスリン分泌を回復させるという予想通りの結果を得ることが出来た。AldoBの欠損は通常食下では表現型に変化が無いため、糖尿病状態でAldoBの発現が増加した際に膵β細胞機能が障害される、糖尿病の新たな分子基盤の存在が示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食負荷マウスおよびβUCP2TgマウスにおいてAldoB欠損の膵β細胞保護効果を確認しているが、他の糖尿病モデルマウス(dbdbマウスなど)でも検証する。健常人ドナー由来のヒト膵島および2型糖尿病ドナー由来のヒト膵島において、AldoBの発現の変化が糖尿病におけるインスリン分泌低下と関連するかを検証する。AldoBが膵β細胞機能に与える影響を、Multi-Electrode Array (MEA)を用いた電気生理学的解析により解析し、インスリン分泌との関連を示したい。
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Research Products
(4 results)