2023 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミン受容体と会合するGPCRの探索と膵臓β細胞のインスリン分泌調節機構の解明
Project/Area Number |
23K15407
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上船 史弥 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (70974046)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 糖尿病 / インスリン / GPCR / ドーパミン / 膵臓ベータ細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は膵臓β細胞におけるグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を抑制する機構の1つとしてドーパミンに着目して研究を行ってきた。特に長期に渡る過剰なインスリン分泌はβ細胞を疲弊させ、最終的には分泌機能不全や脱分化、細胞死を引き起こすため、GSISを適切に抑制する機構が重要とされる。最近、我々はドーパミンD1受容体(D1)がD2受容体(D2)と会合したヘテロ多量体を形成することでインスリン分泌を抑制することを発見した。しかし、ドーパミンがGSISを制御する機序について完全には解明できていない。近年では、複数のGPCRがリガンドの有無により会合または解離状態となることで下流シグナルを調節するという考えが提唱されている。本研究ではこのGPCR同士の相互作用に着目し、D1またはD2と相互作用するGPCRを同定することで、ドーパミンがGSISを調節する分子機構を解明することを目的とする。 本年度において、まずは近接依存性標識法およびプロテオミクス解析によりD1またはD2と相互作用を有する可能性のあるGPCRの同定を行った。マウス膵β細胞株(MIN6)に対して西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をD1またはD2のN末端に融合したタンパク質を強制発現し、細胞膜非透過性ビオチン-xx-フェノールを用いて近接するタンパク質を標識した。解析の結果、D2との相互作用が予測される候補GPCRが得られた。しかしながら、多数の膜タンパク質が検出された一方で、検出されたGPCRの数が少なかったため、今後は細胞膜タンパク質の分離濃縮などにより改善が可能かを検証する。また、次年度においては得られた候補GPCRとの会合の有無を検証するとともに、GSISへの寄与を調べる。さらに遺伝子改変マウスを用いてD1およびD2と生体における血糖恒常性維持との関連性を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はD2との相互作用が予想される候補GPCRを近接依存性標識法により同定した。また、GPCR同士の会合解離状態を調べる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を行うため、D1およびD2と蛍光タンパク質との融合タンパク質(mDrd1-mVenus、mDrd2-ECFP)を強制発現するプラスミドを作製した。今後は同定された候補GPCRについてもFRET用プラスミドの構築を行う。また、生体における血糖恒常性維持に対するD1およびD2の役割を評価するための、β細胞特異的D1またはD2欠損マウス(Pdx1-CreERT2::Drd1fl/fl、Pdx1-CreERT2::Drd2fl/fl)を作製した。今後、得られたマウスを繁殖させ、高脂肪食給餌による2型糖尿病の誘導を行い、耐糖能やインスリン分泌量を追跡する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、まず候補GPCRの絞り込みを行うための近接依存性標識法およびプロテオミクス解析について、細胞膜タンパク質を分離濃縮させることで改善を試みる。その後、実際にGPCR同士の会合が見られるかをDuolink法およびFRET法により検証する。FRET実験用のプラスミドの鋳型は既に完成しているので、候補GPCRの遺伝子を挿入するだけでプラスミド作製は完了する。インスリン分泌への寄与を検証するため、ドーパミンおよびD1とD2の阻害剤と候補GPCRの活性化剤または阻害剤を組み合わせて使用し、インスリン分泌量の比較を行う。また、現在繁殖させているD1またはD2欠損マウスに対して高脂肪食給餌を行い、表現型を調べることで生体の血糖恒常性におけるドーパミン受容体の意義について解明する。
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Causes of Carryover |
物品・消耗品の購入価格において端数が生じたために次年度使用額が生じたが、おおむね計画通りである。 次年度使用分は細胞培養に必要な消耗品の購入に使用する。
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