2023 Fiscal Year Research-status Report
Formyl Peptide receptorに着眼した肺移植医療における新規戦略の確立
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23K15449
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
橋本 好平 岡山大学, 大学病院, 助教 (10959828)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Formyl Peptide Receptor / 虚血再灌流障害 / 急性拒絶 / Annexin A1 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺移植において予後を左右する移植肺の傷害は、虚血再灌流障害(IRI)、急性拒絶(AR)、慢性拒絶(CLAD)の3つに大別される。本研究では好中球に発現する内因性リガンドレセプターの一つであるFormyl Peptide Receptor(FPR)に着目し、肺移植においてIRI、AR、CLADの発症機序における各FPRの役割をマウス同所性肺移植モデルによって解明するのが目的である。 FPRにはFPR1、FPR2、FPR3と3種類のサブタイプが存在し、FPR1は主に炎症促進に作用して、FPR2は炎症・抗炎症の双方に作用すると報告されている。まずは移植肺の障害の中でも好中球の寄与が最も高いと考えられるIRIに関してFPRノックアウトマウスを用いたFPRの炎症促進作用の検討を開始した。野生型マウス、FPR1/2ダブルノックアウトマウス、FPR2ノックアウトマウスにおいて、左肺の肺門を1時間閉塞した後、再灌流開始から3時間時点の肺の損傷に関して検討を行ったが、酸素化や肺組織所見では有意な違いを認めなかった。炎症を導く受容体はFPR以外にも存在するため、FPRノックアウトマウスの使用によっても炎症制御は不完全であることが原因と考えられた。そこで逆にFPR2の抗炎症効果に注目し、抗炎症効果をもたらすリガンドを投与することでIRIの予防を行えないか検討を行うこととした。 Annexin A1はFPRを介して抗炎症効果を示す内因性ペプチドで、主にFPR2を介する作用が報告されているが、そのペプチド断片であるAc2-26はFPR1にも結合することが知られている。そこで、野生型マウスにAc2-26を投与して野生型マウスのIRI制御が可能か検討し、効果発現のための経路を確認するためにFPR1/2ダブルノックアウトマウス、FPR2ノックアウトマウスへの治療効果の制限に関して検討を行う方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたFPRの炎症促進作用では有意な差が出なかったが、FPR2の抗炎症作用に着目し、Annexin A1のペプチド断片であるAc2-26によるIRIの予防の検討を開始している。予備実験により、Annexin A1が作用する時間の設定を行うことが出来て、実験モデルを確立することが出来た。今後、治療効果の比較を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、肺門クランプモデルにおいて野生型マウスにAnnexin A1を投与し、IRIの予防効果を観察し、FPR1/2ダブルノックアウトマウス、FPR2ノックアウトマウスにおける手技を用いて、Annexin A1の抗炎症効果が関係しているFPRのサブタイプの同定を行う。さらに、IL-1β、MyD88、IL-17、IL-6、INF-γ、TGF-βなどのメディエーター発現の解析をRNAシークエンスで網羅的に行い、これらから虚血をトリガーとしたFPR活性に関与するIRIのシグナル伝達経路を明らかにする。また、実際にマウスの肺移植モデルにおいてAnnexin A1のIRI予防効果を検証する。 さらに、肺移植モデルにおけるドナーをアロ抗原不適合株にするとARモデルを再現することが可能で、マイナーアロ抗原不適合株をドナーとするとCLADモデルの再現が可能である。それらの拒絶の程度の評価として標本のH-E染色、Tunel染色による組織学的評価、また免疫染色にてLy6G、CD4、CD8を染色し、好中球、Tリンパ球の浸潤の評価を行い、最終的にRNAシークエンスで網羅的解析を行い、シグナル伝達経路を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していたFPRの炎症促進作用ではなく、FPR2の抗炎症作用に着目してAnnexin A1のペプチド断片であるAc2-26によるIRIの予防の検討を行うように途中で方針を変更した。そのため、昨年度中に予定していた解析をすべて行うことが出来ず、今年度に繰り越しとなった。本年度は昨年度に予定していた、IRIに対する治療群とコントロール群において免疫組織化学により好中球の浸潤に差があるかの解析を行う。また、サイトカインの定量を行い、治療群において炎症が抑えられているかの確認を行う。また、IL-1β、MyD88、IL-17、IL-6、INF-γ、TGF-βなどのメディエーター発現の解析をRNAシークエンスで網羅的に行い、FPR活性に関与するIRIのシグナル伝達経路を明らかにするために繰り越し資金を使用する。
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