2023 Fiscal Year Research-status Report
膵臓癌におけるライソゾームを介したフェロトーシス細胞死の機序解明と革新的治療開発
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23K15505
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
後町 武志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40338893)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膵臓癌 / ライソゾーム / フェロトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓癌は乏血性腫瘍であり、低酸素、低栄養環境下で増殖可能なようにオートファジーが亢進していることが特徴である。またオートファジーの最終段階であるライソゾーム酵素に注目し、ライソゾーム酵素が糖脂質代謝を介してフェロトーシスに関与する機序を解明する。そして、そのライソゾーム酵素を抑制することで膵臓癌に対する革新的治療法の開発を目指す。 フェロトーシスに関与するライソゾーム酵素の同定:膵癌細胞におけるフェロトーシス誘導によるRNA発現量の評価 (in vitro) ヒト膵癌細胞株(PANC-1、MiaPaca-2、AsPC-1、BxPC-3)を用いてフェロトーシス誘導によるRNA発現量を確認した。それぞれの膵臓癌細胞株において生体膜の過酸化脂質をアルコールへ還元するグルタチオンペルオキシダーゼ4をsiRNAで阻害することにより、過酸化脂質を蓄積させ、フェロトーシスを誘導することを確認した。 フェロトーシス誘導前後の膵癌細胞株を用いてフェロトーシス誘導前後にけるライソゾーム酵素遺伝子の発現量の変化を確認するためにRNA-seq解析を行った。その結果フェロトーシス誘導後にはライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼ(GAA)と酸性セラミダーゼ(AC)の発現が増加していることを確認した。 次に上記膵癌細胞株(PANC-1、MiaPaca-2、AsPC-1、BxPC-3)を用いてライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼ(GAA)と酸性セラミダーゼ(AC)の発現を阻害したところ、狭小化したミトコンドリアの蓄積とミトコンドリア膜電位の低下が認められ、ライソゾーム酵素阻害によりフェロトーシスが誘導されたと考えられた。ライソゾーム酵素はフェロトーシスの誘導に必須の分解系であり、ライソゾーム酵素による糖脂質代謝異常の誘導がフェロトーシスにおいても重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では極めて予後不良な膵臓癌において、糖脂質代謝異常が誘導する鉄依存性細胞死であるフェロトーシスがアポトーシス、ネクローシス、オートファジーとは異なる機序の細胞死として癌に対する新治療法となり、さらに既存の薬剤に対する耐性を克服する機序としての有用性について検討することを目的としている。 これまでの本研究の成果から、フェロトーシスがその過程中に鉄代謝異常を生じ、過酸化脂質と狭小化したミトコンドリアが蓄積することを確認した。 以上よりライソゾーム酵素の阻害により誘導されたフェロトーシスが膵臓癌における重要な治療標的となる可能性が示唆され、今後研究を継続する中で、ライソゾーム酵素が膵臓癌の発癌や癌進展においても重要な役割を担っていることを解明できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で確認されたライソゾーム酵素阻害によるフェロトーシス誘導についてin vitroで標的ライソゾーム酵素阻害によるフェロトーシス誘導を評価する。 ヒト膵臓癌細胞株に対し、siRNAを用いたRNA干渉で標的のライソゾーム酵素を阻害し、細胞増殖能を測定する。死細胞の増減をフローサイトメトリー(Annexin V-FITC assay)で定量評価し、ウエスタンブロッティングを用いて細胞死シグナルを評価する。 次に標的のライソゾーム酵素阻害時の鉄代謝を評価するため、細胞内とミトコンドリアにおける鉄、脂質過酸化を蛍光顕微鏡とフローサイトメトリーで評価する。フェリチンの選択的オートファジーであるフェリチノファジーを評価するために、オートファジー関連タンパク質、ライソゾーム関連膜タンパク質をウエスタンブロッティング法で評価する。 その後電子顕微鏡による細胞内オルガネラの観察を行うことで、免疫蛍光染色を用いてミトコンドリアの蓄積やライソゾーム活性を評価する。ミトコンドリア機能の評価として、ミトコンドリア膜電位を測定する。細胞内、ミトコンドリア内の活性酸素種の蓄積をフローサイトメトリーで測定する。 マウスを用いたフェロトーシス誘導による癌治療法開発のため、担癌マウスモデルでのフェロトーシスによる抗腫瘍効果 (in vivo)を確認する。ヌードマウスの皮下に膵臓癌細胞を接種し、皮下腫瘍モデルを作成する。shRNAを搭載したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を作成し、治療標的候補となるライソゾーム酵素を阻害する。皮下腫瘍にウイルスベクターを局注し、抗腫瘍効果を確認する。抗腫瘍効果が増強したライソゾーム酵素について、癌細胞特異的に遺伝子導入できるプロモーターを導入する。膵臓癌腹膜播種モデルに対しライソゾーム酵素を遺伝子導入し、予後改善効果を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由のひとつは、予想外の実験の遅れです。本研究は比較的順調に進んでいるものの、ヒト膵癌細胞株を用いた実験では当初はPANC-1、MiaPaca-2、AsPC-1、BxPC-3すべての細胞株について同時並行で研究を行う予定でしたが、各細胞株の増殖状況や、実験にかかる時間に差が生じたため、フェロトーシス誘導目的に生体膜の過酸化脂質をアルコールへ還元するグルタチオンペルオキシダーゼ4を阻害するためのsiRNAの購入が予定通り進まなかったことで使用額が予定より減少しました。次年度の使用計画としては、残存予算の効率的な活用を図りつつ、遅延した実験を迅速に進め、新たな研究についても同時に進める予定です。また未消化の予算を有効に活用するため、新たな実験の計画立案や人件費の補填、研究成果の発表や国際会議への参加など、研究の進展に貢献する活動に資金を配分する方針です。
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