2023 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質代謝酵素酸性セラミダーゼに着目した膵癌肝転移の機序解明と革新的治療法開発
Project/Area Number |
23K15531
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
谷合 智彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60961860)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 膵臓癌 / 肝転移 / リン脂質代謝 / 酸性セラミダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
実験に使用する細胞株を決定するため、当研究室で保有しているヒト膵癌細胞株4種 (MIA PaCa-2、PANC-1、PATC66、BxPc3)について酸性セラミダーゼの蛋白発現量をwestern blotで評価した、細胞株によって発現量はさまざまであった。最も発現量の多いPANC-1を中心に実験を進める方針とした。 まず、si-RNA法によって、PANC-1に対して酸性セラミダーゼノックダウンを行い、western blot、酵素活性の測定により、酸性セラミダーゼが確実にノックダウンされていることを確認した。 続いて、オリジナル株と酸性セラミダーゼノックダウン株を電子顕微鏡にて形態学的特徴を比較すると、ノックダウン株では細胞間間隙が顕著であり、細胞間接着が脆弱化している可能性が示唆された。また、細胞間接着および上皮間葉転換に関与するEカドヘリンの発現をwestern blotで評価したところ、ノックダウン株で発現低下を認めており、この結果からも細胞間接着の脆弱化および上皮間葉転換の亢進が示唆された。 さらに、酸性セラミダーゼが細胞内シグナル伝達に及ぼす影響について評価するため、細胞膜受容体であるEGFRおよびその下流の細胞内シグナル伝達である、Akt、GSK-3βについてwestern blotで評価したところ、ノックダウン株においていずれの蛋白発現量も増加していた。以上の結果から、酸性セラミダーゼノックダウンにより、細胞内シグナル伝達が亢進し、細胞増殖、アポトーシスに寄与する可能性があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していたC57BL/6マウス由来の膵癌細胞株KPCに対して、酸性セラミダーゼノックアウト細胞株を作製する工程において、ノックアウト株の作製に時間を要しており、それにより動物実験及びその摘出腫瘍から網羅的解析を行う工程が遅れている。現在ノックアウト株の作製について調整を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、ヒト膵癌細胞株における酸性セラミダーゼノックダウンによるシグナル伝達経路への影響については順調に解析が進んでいる。現在はwestern blotによる評価が中心であるが、今後RT-qPCR、フローサイトメトリーを用いた評価を追加で行っていく方針である。 動物実験については、酸性セラミダーゼノックアウト細胞株の作製ができ次第、進めていく。また、ノックアウト細胞株が完成した時点で、in vitroの実験系についてもノックアウト細胞株を用いて再度検証する。
|
Causes of Carryover |
当初、酸性セラミダーゼノックアウト細胞株を作製し、動物実験を開始し、摘出腫瘍から網羅的解析を行う予定であったが、酸性セラミダーゼノックアウト株の作製が遅れており、動物実験および網羅的解析が行えていないため、翌年へのくりこしとなった。 本年は当初の予定通り、ノックアウト細胞株を樹立し、動物実験および摘出腫瘍の網羅的解析を行う予定である。
|