2023 Fiscal Year Research-status Report
超音波ガイド上顎・下歯槽神経ブロックによる口腔・顎顔面領域手術の鎮痛戦略
Project/Area Number |
23K15582
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
汲田 翔 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60834702)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超音波ガイド上顎神経ブロック / 超音波ガイド下歯槽神経ブロック / オピオイド消費量を抑えた周術期鎮痛 / 神経ブロックの安全性 / 口腔・顎顔面領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で設定した臨床研究課題である、上下顎形成術に対する超音波ガイド上顎および下歯槽神経ブロックの周術期鎮痛効果と術後回復の質への影響を評価する前向きランダム化比較研究に取り組んでいる。現在のところ予定症例数は集め終わり、その結果は2023年にParisで開催されたThe 6th World Congress on Regional Anaesthesia and Pain Medicine においてポスター発表を完了している。以下で結果の要点を概説すると、全身麻酔導入後に超音波ガイド上顎・下歯槽神経ブロックを施行したグループ(ブロック群)では全身麻酔単独で管理したグループ(コントロール群)と比較して、術直後からブロック後24時間までのレスキュー鎮痛薬の使用回数(主要評価項目)および疼痛スコア(副次評価項目)は減少させないが、術中のオピオイド使用量を有意に減少させた。本術式においてオピオイドの大量投与は術後の嘔気嘔吐や呼吸抑制などの致命的合併症につながる可能性があり、オピオイド消費量を抑えた周術期鎮痛が望まれていることは交付申請書にも記載した通りである。また、神経ブロック直後から60分後までの局所麻酔薬血中濃度は安全域にとどまっており、複数箇所の局所麻酔薬投与であっても安全であることを示すことができた。また、神経ブロックによる合併症は1例も認めなかった。これらの結果は上下顎形成術に対する超音波ガイド上顎・下歯槽神経ブロックの鎮痛効果と安全性を示しており、同じく口腔・顎顔面領域手術においても臨床応用できる可能性があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上下顎形成術に対する神経ブロックの鎮痛効果については、現在論文化を進めている。成人扁桃摘出術に対する超音波ガイド上顎神経ブロックの鎮痛効果については症例集積中で残り数例である。小児扁桃摘出術に対する超音波ガイド上顎神経ブロックの鎮痛効果については症例集積中でおよそ50%の進捗度である。いずれも研究進行上の大きな問題点はなく進行しているが、小児扁桃摘出術については当初の予定より症例数が少なく、進捗が遅くなっている。超音波ガイド上顎神経ブロックに関する献体を用いた効果範囲検証研究(キャダバー研究)については研究計画中である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究はいずれも予定症例数が集まり次第、学会発表や論文化に向けて取り組む予定である。キャダバー研究は札幌医科大学の解剖室で2024年8月に施行予定となっており、現在研究計画中である。こちらも同様に研究終了後の学会発表や論文化に向けて取り組むことになっている。
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Causes of Carryover |
超音波機器用マイクロコンベックスプローブ購入費を当初申請していたが、超音波機器の設備老朽化によって機械全体を購入する必要性も懸念されたため、2023年度はプローブを購入しないこととした。現在院内手術室にある古い機械やリニアプローブ・コンベックスプローブで代替している。そのための予算は学術活動を進めるためのパソコンや統計ソフトや書籍購入費に充てており、およそ26万円ほどの残金が発生している。
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Research Products
(1 results)