2023 Fiscal Year Research-status Report
糖タンパク質バーシカンによる血管リモデリングに着目した大動脈瘤の病態機序の解明
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23K15637
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
廣見 太郎 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (70970614)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 血管リモデリング / 糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト腹部大動脈瘤(AAA)を複数の患者から収集した。これらのAAA検体を器官培養すると、複数患者のAAAからバーシカンが分泌されていた。 血管平滑筋特異的にEP4受容体を過大発現させたマウスから大動脈血管平滑筋細胞を単離した。この細胞を利用して血管平滑筋細胞がプロスタグランディンE受容体EP4(EP4受容体)シグナルを介してヒアルロン酸、バーシカンを産生させることを見出した。血管平滑筋細胞におけるEP4シグナルはバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質を形成することを顕微鏡下に発見した。
血管平滑筋特異的にEP4受容体を過大発現させたマウス(EP4-Tgマウス)を使用してAAA疾患モデルマウスを作製した。腹部大動脈瘤(AAA)モデルマウスの大動脈血管平滑筋層においてバーシカンとヒアルロン酸の発現が増大していることを見出した。また、Vcanfl/+;SM22CreでAAAモデルマウスを作製するとSM22Creマウスと比較してAAA径が縮小した。血管平滑筋のEP4シグナルが産生するバーシカンはAAAの病勢を悪化させると考えた。EP4-Tgマウスで作製したAAAモデルマウスの大動脈血管平滑筋層を電子顕微鏡で観察すると大動脈血管平滑筋層で病早期からElastin-contractile unitsが消失することを確認した。また、EP4-Tgマウスで作成したAAAモデルマウスの大動脈血管平滑筋層において圧受容タンパクの発現が病早期から減少していることを見出した。 AAA病早期から血管平滑筋細胞周囲にバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質が形成され大動脈血管平滑筋細胞は弾性線維との接着を失い、血管にかかる圧受容に異常をきたしAAAを発症/増悪させると考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管平滑筋におけるバーシカン、ヒアルロン酸複合体がAAAの発症/増悪に関与することを示唆する結果を現在までに得られている。また、in vitroにおいてもバーシカン、ヒアルロン酸複合体がEP4シグナルにより増加し、細胞外基質を形成していることを確認していている。当初の仮説を裏付けるものでおおむね順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
血管平滑筋で過剰に産生されるバーシカンがAAAの病態を悪化させると仮説をたてた。Vcanfl/fl;Myh11-CreERT2、Vcanfl/fl;MYH11-CreERT2;EP4-Tgを作製しAAA疾患モデルマウスを作製する。血管平滑筋におけるバーシカンの過剰産生が抑制されることでAAA発症/増悪が抑えられるかを検討する。 血管平滑筋細胞周囲にバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質が形成され大動脈血管平滑筋細胞は弾性線維との接着を失い、血管にかかる圧受容に異常をきたしAAAを発症/増悪させることをより強固に証明するべく、バーシカン増加が血管平滑筋細胞のメカノセンシングに与える作用の検討を行う。
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Causes of Carryover |
先述したとおり、過剰に産生されるバーシカンがAAAの発症/増悪に関与する仮説を証明すべく、Myh11-Cre-ERT2と掛け合わせた複数の動物実験を次年度行う必要が出てきた。 2023年度にバーシカンとヒアルロン酸がEP4刺激により増加する細胞内シグナル経路を明らかにしたが、当初の予想より順調に結果を出せた。その分の経費を次年度動物実験に使用することとしたため。
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