2023 Fiscal Year Research-status Report
脳挫傷に対する頭蓋骨由来間葉系幹細胞の新たな作用機序の解明と再生治療への開発応用
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23K15649
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前田 雄洋 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (30964275)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 細胞療法 / 脳挫傷 / 電気生理学的評価 / 脳浮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績として実施した研究内容としては研究Ⅰで予定している脳挫傷モデルラットの作成、頭蓋骨由来間葉系幹細胞の樹立培養を実施した。モデル作成も問題なく終了しており、移植細胞の確保も問題なく完了している。さらに研究Ⅱに関しては、実際に脳挫傷モデルラットへの移植実験を実施、その後の神経機能回復の評価に関しても行動学的評価に加え、電気生理学的評価においても目標としていた移植後1か月間にわたる評価を完了している。その評価結果として、頭蓋骨由来間葉系幹細胞の細胞移植により、非治療群と比較をして優位に行動学的評価による機能回復を確認した。さらに、運動誘発電位を用いた電気生理学的評価においても、細胞移植群において優位に波形の振幅の回復を認めるなどの知見を得ている。 上記研究結果については、国内学会に加え、ISSCR 2023 Annual MeetingやBrain & Brain PET 2023など複数の国際学会においてその研究成果の発表を行い、研究結果の持続的な発信を行っている。また、本研究に使用している経時的な電気生理学的評価が可能となる脳挫傷モデルラットの作成技術に関する論文作成を行い、脳神経外科分野の筆頭英文雑誌であるJournal of Neurosurgeryに論文投稿を行い、論文化されている。 さらに、上記研究に並行して脊髄損傷モデルラットに対する頭蓋骨由来間葉系幹細胞の複数回移植の治療効果に関する研究を並行して進め、申請者自身が独自に確立して電気生理学的評価方法を応用した、電気生理学的観点からその移植効果を確認した。こちらの研究内容に関しても、複数の国内学会でその研究成果を報告するとともに、研究結果を集計し、英語論文の作成を行い、現在査読付き英文雑誌への投稿を行っている状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度から2024年度に実施予定であった研究Ⅰ、研究Ⅱに関して予定通りの研究実施を行うことができている。またその研究結果として行動学的評価に加え、電気生理学的観点から脳挫傷モデルラットに対する頭蓋骨由来間葉系幹細胞の移植効果を明らかとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度から2025年度にかけて、大きく以下の二つの研究を予定している。 ①組織内での電気生理学的回復機序の解明:研究Ⅱ.で採取された脳組織を用いて,損傷領域の範囲や軸索伸長(Gap43)や髄鞘形成(Mbp) ,シナプス形成(Synaptophysin)などに関与する因子の組織内での動向をreal-time PCR,ウエスタンブロッティング,免疫染色を用いて解析する。その結果を元に電気生理学的回復の背景となる機序に対する頭蓋骨由来MSCsの具体的な作用時期や作用部位を明らかとする。 ②組織内での急性期脳浮腫改効果とそれに対するMSCs作用機序の解明 移植直後に生じる組織構造の変化を評価するため,急性期の脳組織を回収し,組織含水量法(Brain water content)や血管外色素漏出(Ebans blue content)を用いて脳浮腫の程度を定量的に評価し,移植効果の解析を行う。さらに移植後に脳浮腫の程度に差を生じる時点での脳浮腫形成に関与する因子(MMP-4, PAR-1)や血液脳関門の破綻に関与する因子(ZO-1,craudin-5)の組織内での動向をreal-time PCR,ウエスタンブロッティングや免疫染色を用いて評価することで,脳浮腫改善に対する頭蓋骨由来MSCsの作用機序を明らかとする。 上記二つの研究結果を、すでに得られているin vivoの移植実験実験結果と合わせることで脳挫傷に対する頭蓋骨由来間葉系幹細胞の細胞療法に関する有効性を示した論文を作成し、査読付き英文雑誌への投稿を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度内に購入手続きを行うも、納品が間に合わず、経費使用の手続きが2024年度に繰り越された備品が原因です。次年度使用額である78,875円に関しては、2024年度使用予定の研究に使用する備品の購入に使用する予定としています。
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