2023 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角でのメソトレキサートの鎮痛作用機序の解明-パッチクランプ法による解析
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23K15722
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
太地 良 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60838853)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / パッチクランプ / メソトレキサート / 脊髄後角 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sprague-Dawley系雄性ラットの腰仙レベル脊髄スライスを用いて、脊髄後角膠様質ニューロンからホールセルパッチクランプ法で細胞膜電流を記録し、Methotrexate(MTX)が脊髄後角にもたらす作用を記録、解析した。300µMのMTXを潅流適用したところ、約40%のニューロンで5 pA以上の外向き電流が観察され、その振幅の平均値は7.76±0.77 pAであった。この外向き電流は、同一ニューロンに対してMTXを2回繰り返して適用した場合にも同様に出現し、再現性のある現象であった。自発性興奮性シナプス後電流(spontaneous excitatory postsynaptic current: sEPSC)の解析では、MTXの適用によりsEPSCの出現頻度は2.57±0.75 Hzから1.49±0.60 Hzに低下し、統計学的な有意差を認めた(p < 0.05)。一方sEPSCの振幅は、MTXの適用前後で変化を認めなかった。これらのことから、MTXが脊髄後角においてシナプス前性に作用し、グルタミン作動性ニューロンからのグルタミン酸の放出頻度を低下させる作用、並びに膠様質ニューロンを過分極させる作用を有することが確認された。この結果は、MTXが脊髄レベルで疼痛の伝達に対して抑制的に作用する可能性を示唆している。今後詳細な作用機序を調べるため、Naチャネル阻害薬のテトロドトキシンや、グルタミン酸受容体の拮抗薬、Gタンパク阻害薬のGDP-βSやKチャネル阻害薬のバリウムイオンを適用した状態での膜電流変化の解析を予定している。また神経障害性疼痛モデルラットに対して本研究手法を適用すること、in-vivoでの実験を行うことで、神経障害性疼痛への抑制効果の解析も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和歌山県立医科大学整形外科学講座研究室にてラット脊髄スライスにwhole cell patch-clampを適応し、細胞膜電柱の記録を取ることができている。基礎研究に当てる時間は限られているが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って、2024年度分に関しての研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は国内及び国外の学会で発表しておらず、また順調に研究が遂行されたため、マウスの購入費、維持費が少なく済んだ。本年は試薬や実験器具に割り当てる予定である。
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