2023 Fiscal Year Research-status Report
老化マクロファージによる変形性膝関節症進行機序の解明研究
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23K15729
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江畑 拓 北海道大学, 大学病院, 医員 (00962953)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞老化 / マクロファージ / 軟骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者に多い変形性関節症(Osteoarthritis、以下OA)は、要支援・要介護の主要因であるが、OAの進行を抑制することが可能な原因療法は確立していない。OAの原因療法開発にあたり、複雑多岐に渡るOAの病態を明らかにする必要がある。 OAは加齢によって生じる関節疾患であるが、関節内のマクロファージ中には老化マクロファージに類似した形質の存在が指摘されている。OA関節内に存在する老化マクロファージは、軟骨細胞の機能を変化させることで軟骨変性およびOA進行に寄与する可能性があるが、その機能や軟骨変性及びOA進行に及ぼす影響については不明である。老化マクロファージによって生じる軟骨細胞の機能異常を明らかにするため、マウス腹腔由来初代マクロファージおよびRAW264細胞株について、異なる濃度のH2O2やタモキシフェン、ドキソルビシン、エトポシドなどを使用したin vitro老化モデルを開発した。細胞老化の進展の評価にはβガラクトシダーゼ染色を用いた。老化マクロファージとマウス大腿骨頭軟骨から分離した初代軟骨細胞を培養した。また、老化マクロファージのコンディション培地が軟骨に及ぼす影響を、我々の生体外モデルで検討した。その結果、老化マクロファージは軟骨細胞の異化と軟骨変性を促進することが明らかになった。 qRT-PCRで老化マクロファージと共培養した軟骨細胞で異化因子の発現が増加することを明らかにした。また ウェスタンブロットでも同様の結果を確認した。ヒトOA関節内の滑膜組織のマクロファージは老化マーカーであるP21、P16タンパク質を発現していることを免疫染色で明らかにした。我々の結果は、老化マクロファージOAの関節破壊に寄与している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroでの細胞老化モデルおよび、ウエスタンブロッティングやPCRなどでの評価方法をすでに我々は確立しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
bulk RNA seq解析を用いて、マクロファージが軟骨細胞の異化と軟骨変性を誘導する分子メカニズムを解明する予定である。また、老化マクロファージを膝関節に注入し、軟骨変性におけるマクロファージの病理学的役割について直接的な証拠を得ることも計画している。さらに、変形性関節症の関節(臨床サンプル)から滑膜マクロファージを分離し、その分子プロファイルを解析することも計画している。
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Causes of Carryover |
前十字靱帯切離によるOAモデルマウスからの単離および、過酸化水素刺激によって老化マクロファージを獲得することを計画していた。同方法により老化マクロファージの獲得は可能であったが、得られる細胞数は多くなかった。 十分量の老化マクロファージを獲得し、それらの膝関節内投与による影響を評価するための実験を調整するうえで、次年度へ繰り越す必要が生じた。
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