2023 Fiscal Year Research-status Report
淡明細胞型腎細胞癌の脂質代謝因子を標的とした治療戦略の有効性の検討
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23K15788
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 浩夢 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60970457)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 淡明細胞型腎細胞癌 / SR-BI / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は過剰な F-cholesterol(F-Chol)の蓄積を利用する治療戦略の検証を目的としている。まず 、LDL刺激が淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)に及ぼす影響を評価した。LDL負荷はccRCC細胞内の脂質、特にF-Chol量を増加させ、脂質滴の増加も確認された。また、LDL過剰条件下ではccRCC細胞の増殖活性が増加することが明らかとなった。これまでの検討で、ccRCCにおいてコレステロールの取り込みや流出に関わるSR-BIが高発現していることが免疫染色により示されていたが、その発現強度と臨床病理学的因子との相関を解析した結果、SR-BI高発現群では、核グレードが高く、腫瘍サイズが大きい傾向にあることが明らかとなった。また、脂質滴膜蛋白であるAdipophilinの免疫染色を行った結果、Adipophilinは腫瘍組織で発現が亢進していたが、核グレードが高く、SR-BIの発現が高い領域ではその発現が低いことがわかった。この結果から、SR-BIはccRCCにおいて脂質の細胞外への流出に働いていることが示唆された。 ccRCCにおけるSR-BIの発現意義を詳細に調査するために、sh-RNAを用いてSR-BIをノックダウンしたSR-BI低発現ccRCC細胞株を作製し、培養実験を行った。SR-BI低発現ccRCC細胞株では細胞内に蓄積する脂質量が増加しており、LDL過剰条件下での長期培養により細胞死が生じた。この結果から、SR-BIによる細胞内コレステロール流出を阻害すると、細胞死が誘導されることが示唆され、SR-BI阻害剤のccRCC細胞に対する抗腫瘍効果を評価した。その結果、SR-BI阻害剤はccRCC細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することがわかった。一方で、SR-BI阻害剤は正常近位尿細管細胞株(正常コントロール)には、細胞毒性を示さないことも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで我々が他の悪性腫瘍(悪性リンパ腫)で報告している結果や、これまでの予備実験から、脂質を豊富に蓄積する特徴を持つccRCCでは、脂質代謝が亢進しており、脂質代謝因子阻害剤が抗腫瘍効果を示すことが示唆されていた。今年度は病理組織標本を用いた解析や培養実験を中心に研究を進め、コレステロール代謝に関わるSR-BIの発現がccRCCの悪性度と相関することや、LDLコレステロールがccRCCの増殖活性を増強させること明らかにした。また、当初の予想通りSR-BI阻害剤がccRCCの増殖を抑制し、さらにアポトーシスを誘導することを確認しており、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
SR-BI阻害剤の抗腫瘍効果をin vitro実験により明らかにした。今後はマウスccRCC細胞株を用いた担癌マウスモデルを作製し、生体内でのSR-BI阻害剤の抗腫瘍効果や副作用の有無を評価していく計画を立てている。また、脂質滴の蓄積が報告されている他の癌腫についても、脂質代謝関連因子の発現やSR-BI阻害剤の有効性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は人件費・謝金が発生しなかったことや、動物実験が次年度となったことから次年度使用額が生じた。当該助成金と翌年度分の助成金を合わせて、実験動物(マウス)の購入費や飼育代、実験試薬の購入費等に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)